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(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年9月27・28日付)

第80回国連一般討論演説を行うイスラエルのネタニヤフ首相。多くの国の代表が抗議のため会場から出て行った(9月26日、写真:ロイター/アフロ)

 イスラエルは昔から攻撃されやすい国だが、独りぼっちだったことはない。それが今、建国後初めて孤立へ向かっているのかもしれない。

 イスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフは9月、「イスラエルは一種の孤立状態にある」と認めた。

 この国は「自給自足的な特色のある経済」を営む、他者を頼らない「超スパルタ」になる必要があると語った。

 イスラム組織ハマスによる2023年10月7日の大量殺人以降、イスラエルは独自路線を突き進み、諸外国の助言を無視してきた。

 ガザ市民の平均寿命を75歳からわずか40歳強にまで短縮させ、1年間で5つの国に攻撃を加え、最も付き合いの長い味方の一部とまで疎遠になった。

 米国民からの長きにわたる支援さえ揺らいでいるように見える。孤立したイスラエルは果たして生き残れるのだろうか。

イスラエル建国の歴史に背く振る舞い

 イスラエルの今日の振る舞いは自国の歴史に背いている。

 国を造った世俗派の「シオニスト」(編集部注:元来は中東にユダヤ人の国を造る必要があるという思想を支持する人々のこと)は味方になってくれる国を切望していた。

 レアルポリティークを指針とし、戦闘を行うのは先に攻撃を受けた時にほぼ限定していた。

 だが、同盟国や友好国が世俗化する一方で、イスラエルは逆に宗教色を強めていった。

 宗教派シオニストは今日、政界で勢力を拡大しており、最近では軍の上層部にも入り込んでいる。

 それとは別のグループで、先進国で最も出生率が高い集団として知られる超正統派ユダヤ教徒「ハレディ」は、すでにイスラエル国民の14%を占めている。

 ハレディは長らく政治を避け、男性はトーラー(律法)の研究に没頭してきたが、その男性たちもここに来て右傾化しつつある。

 特に、宗教的な超国家主義者の多くは、パレスチナ人を追い出して「大イスラエル」を造ることによって神の計画とされるものを実現させたいと思っている。

 ネタニヤフはこの考えを奨励し、ガザでの戦争について語る際に、旧約聖書に登場するアマレク人(びと)に言及している。

 聖書がイスラエル人に聖絶せよと命じている民族のことだ。