(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年9月6・7日付)
9月3日に北京で行われた軍事パレード(写真:新華社/アフロ)
ひざを曲げずに高く上げる「グースステップ」で行進する兵士やトラックに積まれた核兵器が好きな人にとっては、9月3日の北京はオススメの場所だった。
中国が第2次大世界戦の終結80周年を大規模な軍事パレードで祝ったからだ。
パレードは国家主席の習近平と世界各国から招かれた25人を超える指導者たちの前で披露された。
そのなかにはロシア大統領のウラジーミル・プーチンや北朝鮮指導者の金正恩(キム・ジョンウン)の姿もあった。
習は会場で演説し、自分は平和を愛する人間であり、「ウィンウィン」の協力が可能であることを信じていると述べた。
だが、パレードによる軍事力の誇示は、それとはいくぶん異なるメッセージを発していた――ウクライナに侵攻し、欧州で1945年以来となる血みどろの戦争を始めたプーチンを温かく歓待していたことを考え合わせれば、特にそうだ。
トランプが羨んだ中国の軍事パレード
パレードの様子を米国で見たドナルド・トランプは「美しい式典だと思う。非常に印象的だった」とコメントした際、自分がその場にいないことに、ちょっとした物足りなさを感じている様子だった。
だが、ソーシャルメディアへの投稿では中国の習にこう呼びかけた。
「皆さんで米国に対して陰謀をたくらむなか、ウラジーミル・プーチンと金正恩に心からの敬意を伝えていただきたい」
もしトランプが今、ロシア、中国、北朝鮮の3国は団結して国際社会における米国の指導力を損なおうとしているという見方に同調しているのだとすれば、ワシントンでバイデン政権の時代に広く受け入れられていた思想にトランプも遅まきながら転向したことになる。
これら3カ国はイランと並び、2024年にフォーリン・アフェアーズ誌に掲載されたリチャード・フォンテーヌとアンドレア・ケンドール=テイラーによる影響力のある論文で「動乱の枢軸」と称されていた。
またワシントンの評論家のハル・ブランズは今年3月、「ユーラシア大陸の、活気があり重要な周縁のあちこちで、修正主義の国々に動きが見られる」と主張した。
さらに「中国、イラン、北朝鮮、そしてロシアはユーラシアの安定の基盤に攻撃を加えている・・・(中略)戦争や戦争の脅威がそこかしこに広がっている」と付け加えた。
イラン大統領のマスード・ぺゼシュキアンは軍事パレードにも、そしてそれに先立つ上海協力機構(SCO)の会合にも出席していた。
SCOは10カ国で構成されるグループで、それ以外にも数カ国がパートナー国として参加している。