イスラエルのネタニヤフ首相はガザへの強硬な姿勢を崩していない(写真:ロイター/アフロ)
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イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの攻撃を激化させてから間もなく2年になります。すでに6万5000人以上の市民らが犠牲になり、9割以上の住宅が損壊しました。生き延びた人たちの間にも飢餓が広がっています。こうしたなか、国連人権理事会の調査委員会はこの9月中旬、イスラエルによるガザ攻撃を「ジェノサイド(集団殺害)」と認定しました。では、ジェノサイドとは、どんな状況を指すのでしょうか。ガザ情勢に関する日本の立場を交えながら、やさしく解説します。

フロントラインプレス

「イスラエルによるガザ攻撃はジェノサイド」

「ジェノサイドは今も続いています。道義的な憤りを禁じ得ず、法的な緊急事態です。加盟国は今こそ行動してください」

 イスラエルによるガザ攻撃をジェノサイドと認定した国連の調査委員会委員長のナビ・ピレイ氏は、9月16日の記者発表でそう訴えました。ピレイ氏は、南アフリカ出身の元国連人権高等弁務官。国際刑事裁判所(ICC)元判事でもあり、ルワンダのジェノサイドに関する国際法廷で裁判長を務めた経験があります。

 今回の調査対象は、イスラム組織ハマスの急襲に対抗し、イスラエルがガザ攻撃を激化させた2023年10月7日から2025年7月末までの約2年間です。この間に行われたイスラエルの軍事行動がジェノサイドに該当しないかどうか、国連の「ジェノサイド条約(集団殺害罪の防止および処罰に関する条約)」に照らして判断することが焦点でした。

 ジェノサイド条約は第2次世界大戦後の1948年、国連総会で採択され、1951年に発効しました。ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)の反省を受け、国連で初めて制定された人権条約です。その採択から約80年。欧州を逃れたユダヤ人たちが建国した国家・イスラエルの行動が「ジェノサイド」と認定されたのです。

 会見でピレイ氏は「残虐な犯罪の責任はイスラエル当局の最高階層にある。彼らはほぼ2年にわたって、ガザのパレスチナ人集団を破壊するという明確な意図を持って、ジェノサイドの作戦を指揮してきた」と強調しました。