現代自動車の工場でICEに摘発され拘束された韓国人技術者(9月4日、提供:Corey Bullard/U.S. Immigration and Customs Enforcement/AP/アフロ)
米国ジョージア州の現代自動車工場で起きた300人を超える韓国人の拘束劇は韓国社会に衝撃を与えた。
関税交渉も難航し、韓国内では米政府への不満も高まっている。
韓国政府はホストを務める11月初めのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会談を控え、いまはじっと我慢の苦しい状況だ。
「日本では、自尊心を傷つけられたという怒りの声が噴出していないのか?」
2025年9月17日、経済官僚出身の大企業役員はポケットから印刷物を取り出して声を出して読み始めた。
自尊心は傷つかないのか?
「自尊心」。韓国人がよく使う言葉だが、いったい何だろうと身構えた。
関税交渉合意を受けて9月4日に日米間で文書化した「戦略的投資に関する了解覚書書」だった。
この文書を交わしたことを受けて、ドナルド・トランプ米大統領がこの日、日米合意に関する大統領令に署名、米政府は9月16日に日本からの輸入自動車に対する品目関税を15%に引き下げた。
米韓間では交渉は合意したが、米政府が求める覚書への署名に韓国側が難色を示し、韓国車に対する関税は25%のままだ。
韓国メディアは「トヨタ自動車の『カローラ』は現代自動車の小型乗用車『アバンテ』より安くなる」と大きく報じている。
「どうして日本はもっと頑張ってくれなかったのか」
「日本国内ではどういう受け止め方なのか?米政府への反発はないのか?」
韓国内では、日本が一方的に譲歩して覚書に署名したとの見方が圧倒的だ。
日米の覚書が公表されて以来、筆者は韓国メディアや企業役員などから繰り返しこんな質問を受けた。