トランプ2.0時代の新秩序にどのように対処すべきか(写真:ロイター/アフロ)
2025年1月に発足した米国の第2期トランプ政権(トランプ2.0)は、戦後80年間米国主導で築き上げ、維持されてきた国際秩序を大きく変えようとしている。日本を含むインド太平洋地域の経済秩序も、関税措置をはじめとするトランプ2.0の諸政策の荒波にのみ込まれようとしている。
変わりゆくインド太平洋経済秩序に日本やASEAN(東南アジア諸国連合)諸国、インド等の同地域諸国はいかなる戦略で臨むべきか。また、同地域でビジネスを展開する日本企業は、これにどう対処し、どのような事業戦略を構築すべきか。
通商・地政学・経済安全保障領域での企業支援を手がけるオウルズコンサルティンググループは、こうした論点を議論するため、「トランプ2.0時代のインド太平洋経済秩序と日本企業への影響」と題し、同地域の政治経済を専門とする有識者との連続対談を行った。第1回は、インド太平洋協力などを専門とする篠田邦彦・政策研究大学院大学教授と、同社シニアフェロー・菅原淳一による対談の概要をお届けする(9月2日実施)。
菅原淳一(以下、菅原):トランプ2.0の下での米国の政策の変化にインド太平洋諸国は翻弄されています。トランプ大統領は、バイデン前政権が進めた脱炭素やDEI(多様性、公平性、包摂性)の取り組みを撤回し、域内諸国の連携を強化するIPEF(繫栄のためのインド太平洋経済枠組み)からの離脱の意向も示しています。対外援助予算も大幅に削減しました。
こうした政策変化の中で、現在、域内諸国が最も悩まされているのが関税措置です。高関税の脅しをかけられた域内諸国は米国と交渉し、課せられる関税率の引き下げを何とか勝ち取りました。しかし、その代償に、自国市場の開放や米国産品の購入、対米投資などを約束しました。
他方で、中国は米国の措置を保護主義的であると非難し、域内諸国に連携強化を働きかけています。中国からの迂回輸出の阻止を求める米国と、経済関係の強化を求める中国の間で、域内諸国は板挟みになっています。中には、インドのように、米中対立を国益の実現に利用しようとしたたかに立ち回る国もあります。
トランプ2.0の下で変容するインド太平洋地域の経済秩序をどのように捉えていますか。
篠田邦彦氏(以下、篠田):トランプ2.0の下で国際秩序がどう変わるのか。これまでの研究を通じて、4つの変化があると考えています。