9月3日、中国・北京では抗日戦争勝利80周年式典が開催される(写真:新華社/アフロ)
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(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

北京・天安門で繰り広げられる新しい秩序の序章

 2025年9月3日、北京・天安門広場で、第二次世界大戦勝利80周年を記念する大規模な軍事パレードが行われる。しかし、この行事で本当に注目すべきは華やかな兵器展示ではない。注目すべきは、主席台に並ぶ三者、中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、そして北朝鮮の金正恩国務委員長である。

 金正恩委員長の北京訪問は、多くの意味を持つ。今回が彼にとって初めての多国間外交舞台への参加である点も興味深いが、さらに重要なのは、ここ数年やや疎遠になっていた北中関係が劇的に回復している兆しが見える点だ。

 中国が金正恩委員長を公式に招待したこと自体が、両国関係の戦略的再編を示唆している。さらにプーチン大統領まで同席することで、この行事は単なる歴史的記念式典を超え、21世紀国際秩序再編の宣言式の性格を帯びることとなった。

 正直に言えば、この三者の会合は西側諸国にとって歓迎すべきニュースではない。中国、ロシア、北朝鮮――この三国はそれぞれ東アジア、ユーラシア、朝鮮半島で既存秩序に正面から挑む代表的な修正主義勢力だからだ。

 中国は南シナ海や台湾問題を通じて米国のアジア覇権に挑み、ロシアはウクライナ侵攻によって欧州の安全保障秩序を揺るがし、北朝鮮は核兵力強化で朝鮮半島の現状を変えようとしている。

 特に興味深いのは、米国の圧力が逆に彼らの結束を強めているという逆説だ。

 米国のトランプ大統領がインドに50%関税を課して「ロシアから引き離そう」としたが、実際には米国との関係が遠ざかり、むしろBRICS諸国間の結束だけが強まっていると分析されている。北朝鮮も同様で、継続的な制裁と圧力に対抗し、中国・ロシアとの連帯を通じて突破口を模索している。

 このような背景のもと、北京での勝利記念日は、冷戦終了後30年余り続いた米国中心の単極体制に対する公然たる挑戦と見なすことができる。

 中国はこの舞台を通じ、自国が構想する多極化国際秩序の青写真を世界に示そうとしている。ロシアと北朝鮮もこれに加わることで、西側に対抗する新たな連帯の前線を構築する意図を隠していない。

 果たして、これは単なる外交パフォーマンスにとどまるのか、それとも新しい地政学的ブロックの誕生を告げる歴史的転換点となるのか。その答えはある程度決まっているように見える。