また、ウクライナで避難中にもかかわらず、プーチンを称える姿には圧倒されてしまった。ロシアが侵略しているウクライナで、そしてウクライナ人の前でプーチンを礼賛することにためらいはないように見えた。

ウ軍大佐「ロシア市民に反プーチン運動をしてほしい、などとは言わないが…」

 クルスク州で活動したウクライナ軍広報部の大佐にも話を聞いた。クルスク州で活動をするにあたり市民とも多くの交流を持ったという。彼はロシア市民に対してどう思うか、という問いに対し短く次のように言った。

「国際水準の情報を持ってほしい。あまりにも情報から遮断されている」

ウクライナ軍領土防衛隊広報部のオレクシ・ドミトラシュキフシキー大佐(筆者撮影)

 そして次のように付け加えた。「ロシア市民に反プーチン運動をしてほしい、ウクライナを理解してほしい、などとは言わない。とにかく国際水準の情報がないと、会話が成り立たない」

 スムイ州の各地で取材を続ける中で、ロシアとの国境から数キロの地点を通過したことがあった。平野なのでロシアの大地が見えるわけではない。しかし間違いなく、すぐそこにロシアはある。

 それでも、ロシアはあまりに遠い。この溝を埋めるには何が必要なのか、もはや分からなかった。