関係ないとは言っても、徴兵はあるし、なにより毎日自らの頭上を、シャヘドを中心としたドローンが飛んでいる。それにクルスク州はドンバス地域と接続していない。ロシア軍が、クルスク州を介してウクライナに入り、ドンバスに行くのは地理的におかしい。
「キーウが攻撃にあっていることを知っていますか?」と筆者は聞いた。どこまで認識の齟齬があるのかを確認しなければならない。
すると、3人とも顔を見合わせて、「知らない」と言った。
筆者が、キーウに長くいるが、ほぼ毎日のようにロシアによる攻撃がある、と言うと、目を丸くして驚き、困惑していた。「なぜキーウが攻撃されるのか?」と3人で顔を見合わせた。
「プーチンを信じて! アメリカの嘘に騙されないで!」
「日本がロシアに制裁を課していることを知っていますか?」と問いかけてみた。
「知らない。なぜ日本がロシアに制裁を課すのか?」と不思議そうにしていた。しかし、3人で考えた後、アメリカの言うことを聞くしかないのね、と結論付けたようだった。
「日本や日本の人々にコメントをください」と言うと次のような回答が返ってきた。
「プーチンを信じて。ロシアと手を結んでください。アメリカのウソに騙されないで」
筆者が話を聞けたロシア人は、たった数人だ。ロシア人の中にもさまざまな考えや立場の人がいることには留意しなければならない。
しかしながら、ロシア市民の、ウクライナへの関心の低さにまず驚いた。筆者が話をしたのは、ウクライナと国境を接する地域に住み、ウクライナに肉親がいるという人々だった。中にはウクライナ語を話せる人たちもいる。
つまりこの避難民たちは、ロシア市民の中でもウクライナときわめて強いつながりがある。彼らが「2024年8月(自分たちの住む地域で戦闘が始まる)まで、自分たちには何の問題もなく、ウクライナで起こっている軍事状況は我々には関係なかった」と言う姿勢には驚いてしまった。