©︎矢沢漫画制作所/集英社
2025年で画業40周年を迎える漫画家・矢沢あい。代表作であり、国内外で圧倒的な人気を誇る『NANA』の世界を深掘りするムックが発売され、話題となっている。『矢沢あい『NANA』の世界』(太陽の地図帖編集部編、平凡社)の内容を交え、『NANA』の作品世界を紹介する。
バンドメンバーのレンの姿は、セックスピストルズのベーシストで「パンクのカリスマ」シド・ヴィシャスを思わせる。ステージでは圧倒的な存在感を放ったものの、破滅へとひた走ったその生涯とは。
(太陽の地図帖編集部)
※本稿は、平凡社のWebサイト「Web太陽」に掲載された記事を再編集し、転載したものです。
――レンてピストルズのシドにちょっと似てない?
と、ハチは言う。「そうか?」「シドのが100万倍かっこいーぜ」とナナは答える*1。
*1『NANA』第1巻135頁
だが、無造作に立ち上げた黒髪にタイトなライダースジャケット、ボロボロに引き裂いたTシャツ、エンジニアブーツ……。ハチの指摘通り、レンの姿はあたかもシドのようだ。
矢沢あい『NANA』第1巻124頁より ©︎矢沢漫画制作所/集英社
パンクの化身となった破天荒な生涯
シドことシド・ヴィシャスは“パンクのアイコン”だ。
シド・ヴィシャス(1977年)(写真:Mirrorpix/アフロ)
その伝説は、1977年、パンクの象徴的なバンド「セックス・ピストルズ」に2代目ベーシストとして加入したことに始まる。
初代ベーシストのグレン・マトロックが脱退し、その後釜としてピストルズの熱狂的なファンで、ボーカルのジョニー・ロットンの友人であったシドが迎えられたのだ。
シドは、サックスやドラムなどをバンドで演奏したことはあったが、ベースに関しては素人であったとされる。
それでも、モデルのような長身痩躯で、独特のファッション・センスがあり、ヴィヴィアン・ウエストウッドにも寵愛されていたシドを、ピストルズのマネージャーであるマルコム・マクラーレンは面白がり、受け入れたという。



