©︎矢沢漫画制作所/集英社
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2025年で画業40周年を迎える漫画家・矢沢あい。代表作であり、国内外で圧倒的な人気を誇る『NANA』の世界を深掘りするムックが発売され、話題となっている。『矢沢あい『NANA』の世界』(太陽の地図帖編集部編、平凡社)の内容を交え、『NANA』の作品世界を紹介する。

『NANA』に登場する伝説の2大バンド「ブラスト」と「トラネス」はどんな音楽を奏でていたか? 「音が出ない」漫画では表現しきれなかったサウンドを、登場人物のセリフと制作時のBGMから推測する。

(太陽の地図帖編集部)

※本稿は、平凡社のWebサイト「Web太陽」に掲載された記事を再編集し転載したものです。

――トラネスの音楽は私の中ではかなり具体的に鳴り響いているのですが、音の出ない漫画でそれを表現するのは本当に難しく、もどかしいです。でもこのイラストはイメージにだいぶ近づけたかも?
と、『NANA』の作者・矢沢あいが語る*1のが、このイラストである。

*1 太陽の地図帖『矢沢あい『NANA』の世界』より

©︎矢沢漫画制作所/集英社

 作者も苦慮しているように、漫画は「音が出ない」。しかし、『NANA』の世界では「音楽」そして「バンド」が重要なテーマである。

「あの頃 世間を賑わせた 2大バンドの売り上げの記録は 今も誰にも破れていない」*2と語られる伝説のバンド、「TRAPNEST」(トラネス)と「BRACK STONES」(ブラスト)は果たしてどんな音楽を奏でていたのか?と気になる読者は多いだろう。

*2『NANA』第12巻136頁より

「パンクロック」のバンド、ブラスト

 ブラストの音楽はメンバーのファッションから推測しやすい。

 ナナやノブ、シンは王道の「パンクス」であり、ナナは“パンクの女王”ヴィヴィアン・ウエストウッドの服を着こなし、ノブは「セックス・ピストルズ」のフロントマン、ジョニー・ロットンのようなパンクスタイルをしている。

 東京で参加したライブイベントは「PUNK NIGHT」であり、ガイア・レコードのディレクターの松尾に「パンクバンド メジャーでヒットさせようなんて やっぱ無謀なんだよ」と言われようとも、目指すところは「パンク・ロック」だ。

『NANA』第8巻81頁より ©︎矢沢漫画制作所/集英社