©︎矢沢漫画制作所/集英社
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2025年で画業40周年を迎える漫画家・矢沢あい。代表作であり、国内外で圧倒的な人気を誇る『NANA』の世界を深掘りするムックが発売され、話題となっている。『矢沢あい『NANA』の世界』(太陽の地図帖編集部編、平凡社)の引用を交え、『NANA』の作品世界を紹介する。

バンドでの成功を夢見て上京したナナたちが憧れた「パンク」のムーブメントは閉塞感が漂うロンドンで生まれた。その象徴的なバンドが「セックス・ピストルズ」だ。

(太陽の地図帖編集部)

※本稿は、平凡社のWebサイト「Web太陽」に掲載された記事を転載したものです。

『NANA』の主人公の一人、大崎ナナは、バンドでの成功を夢見て単身上京する。そのナナを追って、ギターを抱えて上京してきたのが、地元のバンド仲間であったノブだ。

 二人は新たなバンドを結成しようと、ドラムとベースのメンバーを募集する。

 その貼り紙を見て応募してきたシンの「実力」を知るためにセッションをすることになった時、ナナは「ピストルズは?」と問い、シンは即座に「好きです!」と答える。

 そう、ナナたちが目指すバンドは「パンク」なのだ。

『NANA』第3巻32頁より ©︎矢沢漫画制作所/集英社

 パンクは1970年代半ばにニューヨークで生まれた音楽で、ロンドンに飛び火して、一気に燃え広がった。

 当時のイギリスは、「英国病」と呼ばれる経済不況のどん底にあり、失業者が溢れ、ドラッグが蔓延していた。未来が見えない閉塞感が漂い、職もお金もない若者たちの怒りや不満が爆発し、パンク・ムーブメントが巻き起こった。

 その象徴的なバンドが「セックス・ピストルズ」だ。