セックス・ピストルズ。左からシド・ヴィシャス、ポール・クック、ジョニー・ロットン、スティーヴ・ジョーンズ(写真:Everett Collection/アフロ)
ヴィヴィアン・ウエストウッドのブティックから生まれたバンド
「セックス・ピストルズ」は、ロンドン・キングスロードにあるブティック「SEX」で生まれた。
「SEX」は、デザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッドが、パートナーのマルコム・マクラーレンとともに、SMスタイルを取り入れたり、過激なメッセージをプリントしたりした服を実験的に作り販売していた店で、アーティストやミュージシャンなどが多数出入りしていた。
マルコム・マクラーレンは、店の常連で、アマチュアバンドを組んでいたスティーヴ・ジョーンズ(ギター)とポール・クック(ドラム)に目を付け、店員のグレン・マトロック(ベース)、オーディションで選んだジョニー・ロットン(ボーカル)を加えて、1975年にピストルズを結成した(マルコムはマネージャーとなった)。
グレン・マトロックはのちに脱退し、2代目ベーシストとして迎えられたのが、破天荒な生き様でパンク・シーンのアイコンとなった、シド・ヴィシャスだ。
活動期間はわずか3年、アルバムは1枚だけ
短く逆立てた髪、引き裂かれたTシャツに安全ピンを身に着けたピストルズの面々は、当時の社会や政治に対する反抗心を、攻撃的な歌詞とサウンドで、暴力的なまでにストレートに表現した。
1976年11月に発売されたデビューシングル「アナーキー・イン・ザ・U. K.」では、「無政府主義」(アナーキー)を宣言し、既存の権威を徹底的に否定し、保守的な大人たちを挑発した。
セカンドシングル「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」は、イギリス国歌と同名の異曲で、エリザベス2世在位25周年祝典の時期に合わせてリリース。階級社会を「no future」と鋭く批判し、イギリスの国営放送BBCが放送禁止曲に認定したにもかかわらず、全英チャートの2位まで昇り詰めている。
「セックス・ピストルズ」の活動期間はわずか3年と短く、オリジナル・アルバムは『Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols(勝手にしやがれ!!)』1枚に過ぎない。それでも、後世のミュージック・シーンやファッション界に与えた影響の大きさは計り知れず、半世紀を経た今も、その功績は燦然と輝き続けている。
セックス・ピストルズの唯一のアルバム『Never Mind the Bollocks, Here's the Sex Pistols(勝手にしやがれ!!)』のCDジャケット