音楽とファッションでパンクを体現する『NANA』の登場人物たち

 『NANA』の作者・矢沢あいは、「(音楽が好きなので、)ずっと“バンドもの”がやりたくて、(ナナを)バンドのボーカリストという設定にしました」と語っている*1

 では、なぜ、パンクをテーマに選んだのか。そう質問すると、「どんな音楽をやるバンドにするか迷ってロカビリーも候補に挙げたのですが、またリーゼントのヒーローを描くのはどうかと思い、パンクにしました」と答えてくれた。

 自身の「パンク」との出会いは、「中学生の時、大阪のミナミですれ違った、顔に安全ピンをつけたライダースの兄ちゃん」*2だという。音楽よりファッションから入ったと話してくれた。

『NANA』は、パンク・ファッションの魅力も伝えてくれる。

「パンクの女王」と呼ばれたヴィヴィアン・ウエストウッドの服をスタイリッシュに着こなすナナ、逆立つスパイキーヘアに革のライダース姿と、あたかもシド・ヴィシャスが生き返ったかのようなレン、そして、ジョニー・ロットンのような華奢なスタイルを生かし、タイトなダメージパンツや引き裂かれたTシャツを身にまとうノブ……。

 愛読者を公言する俳優・中田クルミが、「ファッションも音楽も『NANA』から学んだ」と話す*3、読めば誰もが憧れずにはいられない、そんな世界が広がっている。

*1〜3はいずれも太陽の地図帖『矢沢あい『NANA』の世界』より