「ベースが弾けない」ベーシストの圧倒的なステージ
シドはピストルズに加入してからベースの練習を始めたといわれる。そのためか、同年10月にリリースされたピストルズ唯一のオリジナル・アルバム『Never Mind the Bollocks, Here's the Sex Pistols(勝手にしやがれ!!)』では、ほとんど弾いていない(主にギターのスティーヴ・ジョーンズがベースも掛け持ちで担当した)。
しかし、ステージでは圧倒的な存在感を放ち、その人気はボーカルのジョニー・ロットンと二分するほどだった。
ドラッグのせいで、まともに演奏できないことも多く、ステージで観客とケンカをすることもあった。
自身の体をカミソリで切り刻んで出血し、客と殴り合って鼻血を出し……、血まみれになりながらベースを弾く姿は、「存在そのものがパンク」として多くの若者の心をつかんだ。
パンクのカリスマとしての役割を果たすかのように、シドは破滅へとひた走った。そして、1979年2月2日、ドラッグの過剰摂取によって、21歳という若さでこの世を去った。
ジュリアン・テンプル監督が、セックス・ピストルズの光と影に迫ったドキュメンタリー作品『NO FUTURE A SEX PISTOLS FILM』のDVDジャケット
映画『シド・アンド・ナンシー』に描かれた、破滅的な恋
シドが「伝説のパンクロッカー」として名を刻むのに貢献した映画がある。シドの死から7年経った1986年に公開され、世界的なヒットとなった『シド・アンド・ナンシー』だ。
映画『シド・アンド・ナンシー』のDVDジャケット
1978年、ニューヨーク。シドがナンシーを刺殺した容疑で逮捕される場面で映画は幕を開ける。警察の尋問により、シドはナンシーとの馴れ初めを語り始める――。