航空自衛隊の主力戦闘機「F-35A」(航空自衛隊のサイトより)
英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は2025年6月20日、米国防総省ナンバー3のエルブリッジ・コルビー国防次官が、ここ数週間以内に日本に対して防衛費を国内総生産(GDP)の3.5%まで引き上げるよう求めたと報じた。
日本は7月1日に予定していた米国との外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)への参加を取りやめたという。
日本が2プラス2への参加の見送りを決めたのは、7月20日が開票日だった参議院選挙も背景にあると同紙は報じている。
現在、日本は防衛関係費をGDP比1%から2%に倍増しようとしているところである。
防衛関係費を倍増しようとすれば、新たに6兆円を超す財源が必要となる。巨額の財源をいかに確保するかが大きな問題として浮上してきた。
そこで、日本は2027年度に防衛関係費をGDPの2%に増やすための措置として、「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」を6月16日に成立させた。
同法では、財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの一般会計への繰入れの特例に関する措置、および外国為替資金特別会計からの一般会計への繰入れの特別措置、並びに独立行政法人国立病院機構および独立行政法人地域医療機能推進機構の国庫納付金の納付の特例に関する措置について定めている。
また、防衛力強化資金の設置等についても定めている。
日本は、防衛費のGDPの2%への増加について、やっと一息ついたところである。そこに、3.5%への増加という話である。
内閣府が2025年2月17日公表した2024年のGDPの速報値は609兆2887億円となり、過去最高になった。
防衛関係をGDPの3.5%とすれば21兆円となる。このような膨大な財源を捻出することは日本の財政状況から不可能である。
ところで、加盟国の国防費をGDP5%へ増額することを要求された北大西洋条約機構(NATO)は、5%のうち3.5%を国防費に、残りの1.5%をインフラ整備などの関連費用に充てることでドナルド・トランプ大統領と合意した。
そこで、日本のやることはまず、NATOのように外交交渉で3.5%のうち2%を純粋な防衛費に充て、残りの1.5%は有事に備えた道路・橋の補修や核シェルター・地下壕の建設などのインフラ整備やサイバー対策など安全保障関連に充てるということで、トランプ大統領と合意することである。
これが窮余の一策である。
さて、本稿では、日本は2027年度のGDPの2%の予算の確保にどのように取り組んだかについて述べてみたい。
併せて、温故知新の精神で、戦後から現在までの日本の防衛力整備を振り返ってみたい。
以下、初めに防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保を巡る動きについて述べ、次に防衛力整備の目標と防衛関係費(当初予算)の推移について述べる。