バラエティー番組で「放送倫理違反があった」と判断されたTBS(写真:共同通信)
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は、2024年10月に放送されたTBSのバラエティー番組『熱狂マニアさん!』について、番組と広告の区別が曖昧であるとして、「放送倫理違反があった」と判断した。昨今、バラエティー番組のみならず、ニュース番組においてさえ、スポンサーの商品をPRしている場面を見る機会が多くなった。公共性が過剰な商業主義の前に歪められていると言える。しかし、BPOの判断や意見が、こうした問題に有効に機能しているとは言い難い。放送局がその責任を自覚し、自浄作用が進むにはどうすればいいのか。
(岡部 隆明:ジャーナリスト)
番組のほとんどでニトリのロゴマークを表示し続け、商品47点を紹介
これは番組と言いながら、明らかに広告ではないのか?
TBSが2024年10月19日に放送したバラエティー番組『熱狂マニアさん!』を見た視聴者から、BPOに対して以上のような指摘がなされたということです。この問題提起が端緒となって、最終的に当該番組は「放送倫理違反」の烙印を押されました。
では、具体的に何が問題だったのでしょうか? BPOが公表した資料に基づいて、問題と思われる事象を列挙します。
・家具・インテリア大手ニトリの商品47点について、機能やメリットを紹介した。
・1つ1つの商品について、正式な商品名と税込み価格を表示した。
・番組のほとんどの時間で、画面の左上にニトリのロゴマークを表示した。
・スタジオやVTRで、タレントが「即、買いに行く」「今、ニトリに行きたい」などと述べた。
・同番組で、ニトリの30秒のCMが2回流れた。
これらを踏まえて、BPOは以下の3つの問題点を指摘しました。
①番組と広告の識別に関して、番組制作者の認識が甘く、視聴者から疑念を持たれる可能性が高い内容が放送された。
②ニトリのCMが番組本編と直結、あるいは近接して流れたことも重なり、視聴者から疑念を持たれる可能性をさらに高めた。
③事前に防ぐための考査も十分に役割を果たせなかった。
番組と広告の識別については、日本民間放送連盟(民放連)の「放送基準」の第92項で、次のように定めています。
「広告放送はコマーシャルとして放送することによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」