7月20日に投開票が行われる参議院議員選挙(国会議事堂/写真:共同通信社)
7月20日に投開票される参議院議員選挙。比例で出馬している候補者は選挙区が日本全国に及ぶため、連日にわたって鉄道や航空機、船などを使って各地を遊説した。選挙期間の17日間で費やす交通費は高額となり、資金的な余裕がなければ比例で立候補できないと考えがちだが、実際はどうなのか? フリーランスライターの小川裕夫氏が政治家たちの鉄道事情を解説する。
全国を飛び回り莫大な交通費がかかる比例代表の候補者
昨年(2024年)の衆院選で石破茂総裁が率いる自民党と、連立与党を組む公明党は大敗を喫した。石破氏は事前に自公で過半数という勝敗ラインを明言したが、結果はそれを大きく割り込み、少数与党となった。
今回の参院選は、自公にとって絶対に負けられない選挙となる。石破首相は勝敗ラインを「非改選議席を含めて、参議院で過半数」と明言している。
参院選の定数は248で、3年ごとに半分ずつを改選する。今回の参院選は125議席(東京選挙区の非改選の欠員1補充)を争うことになるが、その内訳は都道府県ごとに割り振られた選挙区から75議席、日本全国をひとつの選挙区とする全国比例から50議席を選出する。
全国比例はその名の通り日本全域を選挙区にしているため、出馬した候補者は全国各地を駆け回って支持を訴える。選挙区が広い分、選挙期間中に想像を絶する移動をしなければならない。
ちなみに、選挙区から出馬する場合の供託金は300万円なのに対して、比例から出馬する場合は600万円となっている。比例で出馬するだけでも高額な資金が必要になり、しかも全国を回って支持を訴えるには、莫大な交通費がかかる。候補者たちは、その資金をどのように工面しているのか。
答えを先に言ってしまえば、選挙管理委員会が「特殊乗車券・特殊航空券」というフリーパスを候補者に支給している。
なぜ、無料のパスを支給しているのかと言うと、候補者各自が交通費を自腹で賄うことになったら、資金的に余裕がある候補者が選挙戦で有利になってしまうからだ。こうした配慮があっても選挙資金の格差を完全になくすことは不可能だが、候補者(もしくは所属政党)の経済力によって選挙活動に少しでも差が出ないように知恵を絞っている。
候補者の多くは選挙区を走り回る移動手段として主に選挙カー、つまり自動車を使用しているため、「鉄道や航空機などを使わなければいい」という意見もあるだろう。だが、比例の候補者は「今日は東京、明日は大阪」といったように選挙期間中は長距離移動を繰り返し、有権者が多い大都市間を頻繁に移動している。その移動に選挙カーを使うのは非現実的だし、非効率だ。それら長距離移動には新幹線や航空機を使うのが一般的だろう。
さらに、自動車は交通渋滞に巻き込まれるなど、時間が読めない不確定要素が大きい。多くの候補者はSNSなどを通じて街頭演説のスケジュールを広く知らせて人を集め、自分の政見に耳を傾けてもらおうとする。それを限られた期間内で効率的にこなすには、タイムスケジュールの遵守は欠くことができない。だから、時間を読みやすい鉄道移動は重宝される。
では、選挙管理委員会が候補者に支給している「特殊乗車券・特殊航空券」とは、どのようなものなのか。