経済政策も参院選の重要な争点に。写真は公示前の7月2日に日本記者クラブ主催の討論会に臨む与野党の8党首。左から、参政党の神谷代表、共産党の田村委員長、公明党の斉藤代表、立憲民主党の野田代表、自民党総裁の石破首相、日本維新の会の吉村代表、国民民主党の玉木代表、れいわ新選組の山本代表(写真:共同通信社)
7月20日に参院選が投開票となる。争点の一つはインフレに直面する経済政策だ。これまで政府は2%成長を志向してきたが、それは果たして正しかったのか、いま本当に必要な政策は何か。元日銀の神津多可思・日本証券アナリスト協会専務理事が解説する。(JBpress編集部)
(神津 多可思:日本証券アナリスト協会専務理事)
30年で1433万人も減少した生産年齢人口
総務省によれば、日本の15〜64歳の生産年齢人口がピークだったのは1995年で、総人口がピークだったのは2008年だった。前者は、バブル崩壊の後始末の最中であり、後者はリーマンショックの真っただ中だった。そういうこともあって、マクロ経済を安定させるための金融政策、財政政策の主眼もそれら大きなショックへの対応にあった。
人口動態が経済に与える影響は、じわりと現れるので、目の前の事象に囚われているとついつい軽視しがちになる。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2025年の生産年齢人口は7283万人であり、ピークに比べ1433万人減少している。他方、東京都の推計によれば、2025年6月1日現在の東京都の人口は1426万人である。要するに、過去30年間で日本の生産年齢人口は、ちょうど今の東京都の人口分減ってしまったのである。
それでも、政策当局の目線としては、明示はされなかったが、2%程度の実質成長が目指された。そのために金融は超緩和となり、財政赤字は世界に冠たるものとなった。
GDPとは、国内に住む人が生産する付加価値の総和である。その付加価値を生産している人口が30年間で15%以上減る中で、当局が採用した政策は2%程度の実質成長を実現することと整合的だったのだろうか。
話をさらにややこしくしたのが、「デフレ」こそが経済不振の原因だという、もっともらしいが表層的な整理だ。
確かに日本経済からは長らく不振感が拭えていないが、それについては本当に物価環境が第一の原因だったのだろうか。デフレと言っても、ずっと消費者物価のマイナスが続いていたわけではなく、かつマイナスになった時でも10%に及ぶような物価下落が起こったわけでもない。