カナダ西部カナナスキスで開催されたG7に合わせ、トランプ米大統領(左)と会談する石破首相(写真:内閣広報室提供・共同)

主要7カ国首脳会議(G7サミット)の開催に合わせ、石破茂首相とトランプ米大統領が会談した。トランプ関税の扱いについて赤沢亮正経済財政・再生相が繰り返し渡米し、地ならしを進めてきたが、首脳同士の話し合いでも決着は持ち越しとなった。自由貿易をベースとするグローバリゼーションに米国が背を向け、内向き志向を強める中、日本はどのように振る舞うべきなのか。元日銀の神津多可思・日本証券アナリスト協会専務理事が解説する。(JBpress編集部)

(神津 多可思:日本証券アナリスト協会専務理事)

変節するグローバリゼーション

 対米交渉は長引き、ウクライナ戦争の先行きはみえず、中東情勢はさらに混迷を深めている。そうした中で日本経済は、米国のように内向きになろうとすることもできない。食料やエネルギーの自給率の低さをみればすぐに分かるが、自由な国際貿易の体制が壊れてしまえば、困窮化は避けられない。

 1990年代以降、地球規模で進んできた市場メカニズムに基づく分業体制の深化、つまりグローバリゼーションは、2020年代に入ってその変節が明らかになってきた。先般のコロナ禍も、そうした動きが進んだからこそ、地球規模の災禍となったところがある。

 今後、これまでのようなグローバリゼーションは進まず、そうかと言って、すでに築き上げた国境を越えた各国経済の密接な分業体制を全面否定することもまたできなそうである。

 このグローバリゼーションの変節、すなわち「デ・グローバリゼーション」はどういうものになるのか。日本は国家としてのイメージを固め、その下でどのような立ち位置を示すのか早くはっきりさせて、内外に示す必要がある。

 そうしないと、新しく、大きな変化に能動的に立ち向かうことができないし、同じような状況にいる国々と新しい連携を築いていくことも難しい。

 30年近く続いてきたグローバリゼーションのつまずきは、今から振り返れば2000年代後半の世界金融危機にあった。

 この金融危機は、市場メカニズムに基づき、利益を最大化しようとして、多額の資金が国境を越えて動いたが、リスクの評価を間違え、結果的に大きな損失が出たというものだ。

 金融取引は、本質的には実物取引の反対側にあるものだが、価値を保存することが可能になって以降、資金の動きが実物取引とは離れ、それ自体が利益の拡大を目指して動くようになった。いずれの国も、何度かのバブルの生成と崩壊を経験しているが、それが世界規模で起こったのは、やはりグローバリゼーションの帰結と言えるだろう。