2025年7月4日、日本選手権、男子3000m障害決勝で優勝した青木涼真 写真/森田直樹/アフロスポーツ
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(スポーツライター:酒井 政人)

青木がラストスパートで新家と佐々木に完勝

 日本陸上競技選手権の男子3000m障害は東京世界陸上代表が内定している三浦龍司(SUBARU)が不出場。各国代表は最大3枠のため、日本代表を確実に手にするには「2位以内」に入る必要があった。

 レースは村尾雄己(順大4)が先頭で1000mを2分51秒で入ると、新家裕太郎(愛三工業)が前に出て、2000mを5分43秒で通過した。トップ集団は4人に絞られると、残り650mの障害物で小原響(GMOインターネットグループ)が転倒。顔面を強打して、担架で運ばれるアクシデントがあった。そのなかで冷静にレースを進めたのが前回覇者の青木涼真(Honda)だ。

 新家、佐々木哲(早大1)との残り1周の争いに「ラストのスピードには自信があった」と青木。バックストレートで先頭に立つと、貫録十分のスパートを放ち、8分26秒62で連覇を果たした。

 今季は金栗記念(4位)の前日に転倒して胸を強打した影響で、アジア選手権に出られず、「東京世界陸上をあきらめかけた時期もあった」という。それでも5月のセイコーゴールデングランプリで自己ベストに迫る8分20秒99の3位と復調。日本選手権の優勝で「Road to Tokyo 25」のターゲットナンバー(36)内に浮上した。5大会連続となる世界大会で悲願の「入賞」を目指していく。

「Road to Tokyo 25」でターゲットナンバー内につけていた新家は青木に引き離された後、佐々木との差を何度も確認。8分28秒56で2位を確保して、安堵の表情を浮かべた。なお最新の「Road to Tokyo 25」では青木の35番目より上となる30番目につけており、東京世界陸上に前進したといえるだろう。

 一方、金栗記念でU20日本歴代2位となる8分29秒05をマークした佐々木はラスト勝負で青木と新家に敗北。レース中盤、抜き脚が障害に当たるミスがありながら8分30秒37の3位と健闘したが、東京世界陸上は厳しくなった。

「2位以内ではなくて優勝を目標にやってきて、自分のなかでは8割、良いレースをすることができました。でも、おふたりに最後までつくことができなかったのは自分の弱さだと思います」と佐々木。7月下旬のワールドユニバーシティゲームズで勝負した後は駅伝シーズンに合わせていく。

 なお東京世界陸上代表が内定している三浦龍司(SUBARU)は7月11日のダイヤモンドリーグ(DL)モナコ大会で爆走した。五輪を連覇中のスフィアン・エルバカリ(モロッコ)と大接戦を披露。自身が持つ日本記録(8分09秒91)を一気に6秒48も更新する8分03秒18で2位に入っている。

 日本選手権を連覇した青木も7月12日に米国で行われた大会で日本歴代2位となる8分18秒75をマーク。自己ベストを3年ぶりに塗り替えた。