「軍艦島」とも呼ばれる長崎市の端島(写真:共同通信社)
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 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の日韓関係改善の方向性を維持すると豪語していた李在明(イ・ジェミョン)韓国政権が、早くも歴史問題を理由に日本政府と対立ムードに入った。ユネスコに登録された軍艦島(端島)の説明資料で、韓国人徴用工の歴史をきちんと記入しなかったという理由でユネスコに問題提起したが、日本との表決で敗北を喫し、韓国世論が日本に対する非難一色に変わってしまった。

韓国での端島のイメージを決定づけた映画『軍艦島』

「軍艦島」とは、長崎市の端島のことで、「明治日本の産業革命遺産」の一部として2015年8月にユネスコに登録された。

 ただ韓国人にとっての「軍艦島」は、太平洋戦争当時、韓国人徴用工の強制労働の悲しい歴史の現場として知られている。韓国の政府と歴史学界によると、800~1300人に達する韓国人がここの炭鉱へ送られ、賃金もまともに受け取れないまま地下に閉じ込められて強制労働に遭い、島を脱出しようとして銃殺された人も多数いたとされる。

 とくに韓流スターのソン・ジュンギが主演を務めた韓国映画『軍艦島』(2017年)には、韓国人が軍艦島を眺める視線がよく表れている。

韓国映画『軍艦島』

 日本軍によって強制的に連行され、日光も入らない地下で死ぬまで労役をさせられながら人権を蹂躙される韓国人、命令に従わない韓国人労働者を躊躇なく殺す日本人使用者、同じ同族に向かって残忍な暴力を振るう日本人の下僕になった親日韓国人の3種類の人間群像の姿が描かれた、まさに地獄を連想させるところだ。映画では軍艦島を〈一度入ったら生きては出られない地獄の島〉と説明している。

 端島の旧島民からは事実と異なるストーリーや描写が多分に含まれているとの批判の声が上がったが、韓国人が知る「軍艦島」の歴史は映画に描かれたようなものになっている。

 そのため、端島をユネスコ世界文化遺産に登録しようとする日本政府の動きに対して、韓国政府は強く反対した。