「時代遅れ」の男
監督は高橋伴明。「桐島に関しては知らないことが多すぎて。ただその分自由であった」とコメント。『夜明けまでバス停で』で組んだ脚本家・梶原阿貴と組み、シナリオ化した。
ちなみに桐島が恋人と一緒に映画『追憶』を観た後、喫茶店で語り合う場面は監督の実体験が元になっているそうである。劇中の桐島は、恋人から「時代遅れだ」と言われて振られてしまうが、高橋監督自身が内ゲバで逮捕されて留置場に半年勾留されたことがきっかけとなり、いい会社に就職したい彼女から突きつけられた言葉なのだとか。
とはいえ、映画にも登場する桐島の盟友で現在も反権⼒闘争を続ける宇賀神寿⼀⽒が取材協⼒するなど、桐島の人物像をはじめ、描かれている世界は真に迫っている。
搾取する大企業への抗議活動であって、人を殺してしまったり、怪我をさせてはならない。劇中、桐島は工事現場にアルバイトして入り、事前に潜入調査をしていたところが描かれる。

昭和、平成、令和の3つの時代を彼はどのように生きてきたのか。105分の上映時間のうち、1時間以上が逃亡生活である。東京にほど近い湘南で、なぜ誰にも知られずにいられたのか。彼の繊細で几帳面な性格が浮き彫りになっていく。
