もう一つの可能性、極限状況で失われた倫理
さて、この人工生命体説だが、当然、対立する仮説も検討すべきだろう。
バルタン星人が自然進化した知的生命体で、核爆発という極限状況で倫理を失った可能性である。
自然進化した種族は、生存競争や共生を通じて倫理や共感を育む。地球の人類も、社会性を通じて「生命」の尊さを学んだ。
しかし、バルタン星の壊滅という危機は、種の存続を最優先させ、他者の生命を顧みる余裕を奪ったかもしれない。
第2話で地球を「最後の希望」とみなす彼らの行動は、絶望的状況下での極端な価値観の現れと解釈できる。この場合、「生命」への無理解は設計ミスではなく、環境による倫理の崩壊によるものだ。
ただし、彼らの高度な技術力やテレパシーのような非生物的特徴は、自然進化よりも人工的な起源を強く示唆する。
自然進化説は20億の同胞や種の存続意識に適合するが、人工生命体説は技術と行動の一貫性をより自然に説明する。バルタン星人が自然進化の生命体と、人工生命体のどちらに近いかは読者の判断に委ねたい。
遺産と滅亡の文明サイクル
バルタン星人の物語は、文明の興亡と技術の継承を映し出す。第2話の核爆発は、創造主の自滅と遺産の継承を示す。
人類も、科学特捜隊のジェットビートルやマルス133に見られるように、技術を進化させている。この技術が発展すれば、人工知能やバイオロイドを生み出す未来が訪れるだろう。
バルタン星人の技術は、過去の文明の栄光とその滅亡を物語っている。初代「ウルトラマン」の宇宙は、文明が技術を築き、滅び、その遺産が新たな存在に引き継がれるサイクルを描いているようである。
歴史を振り返ると、文明は常に次の世代に何かを残してきた。バルタン星人のハサミが創造主の遺産を象徴するなら、人類の技術もまた、未来の何かを生み出す種なのかもしれない。