中国の苦悩
昨年の3月に北京の社会科学院に招かれて、教官や大学院生を前にして、少子高齢化問題について講義をした。この研究組織は、中国政府のシンクタンクであり、政府も国民も、最近になってこの問題に対する関心を高めている。
先述したように、中国の少子化は、日本よりも深刻である。この少子化傾向が続けば、国力を大きく殺ぐことになる。アメリカと比較したときに、この点が中国のアキレス腱である。
強力な軍隊を持っても、兵士の数が不足するようでは戦力にならない。人口が減少したのでは、世界の大国として影響力を行使できなくなるが、人口世界一の座はインドに奪われてしまった。
日本では介護保険など介護システムが充実しているが、中国はこの分野で遅れており、少子高齢化社会で親の介護が若い世代の大きな負担となっている。
中国では、国内問題として、今や人口減少への対応が大きな争点となっている。
中国共産党は、2021年5月31日の政治局会議で、1組の夫婦に3人目の出産を認めることにした。
1979年以降、中国は人口抑制策として「一人っ子政策」を実施してきたが、少子高齢化が進み、一人の子どもが両親と祖父母の老後の面倒を見るという過酷な状況が生まれた。
そこで、中国政府は、「一人っ子政策」を緩和し、2016年に「二人っ子政策」に政策転換したが、その後も、少子高齢化に歯止めがかかっていない。合計特殊出生率は、2019年は日本が1.36、中国が1.30、2020年は日本が1.34、中国が1.28である。
そこで、「三人っ子政策」に変更したのである。そして、2022年には、合計特殊出生率は、日本が1.26、中国が1.18となり、日本と共に中国の少子化が進展している。