中国では、夫婦共稼ぎが普通であるが、大都市に住む若いカップルにとって生活費、とくにマンション価格の高騰は深刻な問題になっている。
また、子育て、とくに教育に費用がかかりすぎ、2人目の子どもを持つのは無理になっている。お金がなくて結婚を断念する中国人男性が増えている。
中国の受験地獄
中国の歴史をひもとくと、598年から1905年まで実施された科挙に見られるように、厳しい競争社会である。今でも、大学入試、そして、入学してからも競争が激しく、それは日本の大学の比ではない。科挙は今も続いているのである。その競争の激しさが少子化現象につながっている。また、さまざまな社会不安の原因にもなっている。
中国の大学受験は、日本以上の地獄である。日本と同様に、幼稚園の頃から大学受験に備えて準備をはじめ、小学校、中学校、高校と努力を続けねばならない。
毎年、6月7日、8日の2日間、「高考(ガオカオ)」(全国統一大学入試)が行われる。中国の大学の9割が国立なので、ほぼ皆がこの入試を受ける。2024年は約1342万人が受験した。1年に1度の一発勝負で、一家総出の総力戦となる。
高考で人生が決まるので、「知識改変命運(知識は運命を変える)」という。高考の結果で入学できる大学が決まるが、清華大学、北京大学、復旦大学、上海交通大学、四川大学、大連理工大学、中国海洋大学など39の一流大学(重点大学)の合格率は5%以下である。一発勝負なので、高校では明けても暮れても勉強である。中学以下でも事情は同じで、家庭教師や塾もある。プレッシャーで心身が不調になる者も多い。
受験地獄は、日本よりも中国のほうが遙かに過酷だ。日本では、私立を含めてさまざまな大学があり、入試も多様である。そこで、富裕層の子女は日本の大学に入る。2024年5月時点で、東京大学の外国人留学生5104人のうち3396人が中国人で、これは外国人労働者留学生全体の66.5%を占めている。2位の韓国は369人、全体の7.2%である。
2014年5月には東大の中国人留学生は1136人(39.5%)だったので、10年間で3倍に増えている。ちなみに、当時も中国が1位だが、2位の韓国は512人、17.8%である。
とくに大学院に中国人留学生が多い。学部生は約1万4000人で、中国人留学生は167人であるが、大学院は約1万3500人のうち、留学生は約4100人、うち約3200人が中国人である。
中国で名門校に入学できず、4年間を終えた学生が、比較的入学しやすい東京大学の大学院に来るのである。そうすると、最終的学歴が、東大修士、東大博士卒となり、箔がつく。