4.滑空弾攻撃を急増させている意図

 ロシア軍は滑空弾攻撃を増加させることで、肉挽き攻撃とも呼ばれてきた損失を厭わない肉弾戦による兵士の損害を抑えている。

 さらに、滑空弾は陸上部隊の砲が破壊されて少なくなった分を補填する効果も発揮し、ウクライナ地上軍防御部隊の損害を増加させている。

 ウクライナ軍にとって、ロシア軍の滑空弾攻撃への対処は極めて難しい。

 その理由は、第1線戦場付近に配備されているウクライナ軍の防空ミサイルでは、滑空弾攻撃をする戦闘機を撃墜できないからだ(何度か成功したことがあるが、最近はその成果はない)。

 また、ウクライナ空軍戦闘機には、滑空弾攻撃を行うロシア戦闘機まで届くミサイルがないため、ほとんど撃墜できていない。

 つまり、ウクライナとしては、現在のところ対処する方法がないのである。

 ロシアがこれまでと同じ兵力、あるいはそれ以上の兵力を投入すれば、ロシア地上作戦の進展が早くなる可能性がでてくる。

 ロシアは今、この戦果を期待しているのである。

 ロシアは、滑空弾攻撃を急増させ、地上作戦を有利に進めようとしている。これは、停戦に向かおうとする行動ではない。

 当面は戦争を継続し、ウクライナの領土をできる限り多く占拠しようとする意図だと考えるべきだろう。

5.米欧が今支援すべきこととその狙い

 今回、ウクライナが41機の重爆撃機を破壊したことは大戦果ではあるが、この戦果は巡航ミサイルの発射には重大な影響を及ぼすが、滑空弾攻撃と地上作戦には、直接影響がない。

 ウクライナは、前戦への滑空弾攻撃を止める必要がある。

 ウクライナはこれまで、ロシア空軍の戦闘機・攻撃機等約370機を破壊したが、まだ約500機残存している。

 ウクライナとしては、ロシアの戦闘機・攻撃機を空中あるいは駐機されている状態で攻撃し、撃墜したいと考えているはずだ。

 ロシアの滑空弾攻撃を止めるには、米国製の長射程の空対空ミサイル、例えば射程最大180キロの「AIM-120D」を500発も与えれば、ロシア機を撃墜できる。

 そうすれば、ロシア機による滑空弾攻撃はできない。そうなれば、ロシアの地上作戦の進展は不可能となる。

 ウクライナが、ロシア領内の石油施設や軍事関連工場の破壊と併せてロシア戦闘機を撃墜できれば、ロシアは、停戦せざるを得なくなると考えられる。