2.損害に見合う戦果なのか
ロシア軍兵士の損失(死傷者)は、これまでの推移でみると、著しく増加していることが分かる。合計98万人を超えている。
具体的に、1年ごとの損失は、2022年6月からの1年間に約18万人、2023年6月からの1年間に約30万人、2024年6月からの1年間に約50万人である。
グラフ ロシア兵の損失の推移

1年ごとの比率では、3年目は1年目の2.7倍、2年目の1.6倍となっていて、この1年間の損失は前年、前年年と比べ著しく多い。
ウクライナ戦争が長期化して、ロシア軍がドネツク州全域を占拠するには、どれほどの損失を受け入れなければならないのか。
これまでの推移から予測すると、50万人の2~3倍、つまり、100万~150万人の損失を覚悟しなければならないということになる。
その損失は、人権を無視するロシアにとっても大きすぎる。
「これだけの損失を受け入れる戦いをすることはできない」とロシアは考え、作戦を変えてきた。
3.戦闘機による滑空弾攻撃の変化
最近、ロシアの地上作戦の攻撃要領が変わった。
それは、地上攻撃を支援する戦闘機による対地攻撃、つまり滑空弾攻撃が増加していることだ。
昨年6月には2300発、今年に2月3600発だったものが、今年4月に5400発、5月に5300発と増加している。
滑空弾攻撃(空爆)は、約70~80キロメートル離れたところから、戦闘爆撃機が1発あたり100~150キログラムの爆薬が装填された滑空弾をウクライナ軍地上部隊に対して発射して攻撃するものである。
ミサイルのように精密には誘導されないが、爆弾には翼がつけられているので、概ね目標に向かって飛翔していく。
図 ロシア戦闘爆撃機による滑空弾攻撃のイメージ

グラフ ロシア軍による滑空弾攻撃(発射数)の推移

これらの100~150キログラムの爆薬が搭載された滑空弾が、ウクライナが防御している陣地に命中すると、陣地や戦車等は破壊されて、兵士も吹き飛んでしまうほどだ。
以前は、1カ月に2300~3700発だったものが、ここ2カ月間は約2倍の月間5300~5400発に増加した。2000発以上も増加しているのだ。
これだけ撃ち込まれると、ウクライナ防御部隊には多くの損害が出る。
その詳細は公表されてはいないが、ウクライナ軍はダメージを多く受けていたに違いない。