ソニー製「ホークアイ」活用が世界の標準
メジャー取材経験の長いスポーツライターの菊地慶剛氏は、2023年8月13日付記事(Yahoo!ニュース)「遂にリプレー検証制度が限界を迎えたNPBと革新を続けるMLBの間で顕在化している圧倒的な差」で、「試合中の映像を、集中オペレーションルームで管理し、すべてのリクエストに対応するシステムをとっている」と紹介する。また、20年にホークアイが全球場に導入されたことで、「リプレー検証もより多角的に実施できるようになった」と指摘する。
ホークアイを導入しているのは、メジャーだけではない。韓国プロ野球(KBO)に詳しい室井昌也氏は5月28日付記事(Yahoo!ニュース)「韓国プロ野球の『リプレー検証』は審判団ではなく判読センターで実施。最大16映像で検証する仕組みとは」でKBOのリプレー検証を取り上げている。
記事によれば、「ビデオ判読」と呼ばれるリプレー検証は、「メジャーと同じく球場ではなく、ソウル市内の判読センターで実施され、各球場に設置された7台のカメラと中継映像を合わせた最大16の映像で確認できる」という。そして、今季からは映像確認の迅速化と正確性を高めるため、やはりホークアイのリプレーシステムが導入されているのだ。

室井氏の記事によれば、判読センターをはじめとした新たなシステムの導入に、国の行政機関、文化体育観光部の「主催団体支援金」を活用しているという。
ホークアイは、ソニーのグループ会社が手がけ、野球に限らず、他のスポーツでもリプレー検証に導入されている。
2022年のサッカー、ワールドカップ(W杯)カタール大会の「三笘の1ミリ」は現在も語り草だ。日本代表の三笘薫選手(ブライトン)が1次リーグのスペイン戦で決勝点をもたらしたアシストが、直前にゴールラインをギリギリのところで割っていなかったことは、ホークアイによる「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」が証明した。
プロアメリカンフットボールのNFLでは、フィールド上の計測精度を高めるために活用するほか、プロテニスのメジャー大会でもボールのイン・アウト判定に採用される。
ソニーの20年8月21日付の報道資料によれば、「ホークアイの審判判定補助システムやトラッキングシステムは、世界90カ国以上、25種類以上の競技、年間3万回以上の試合で使われており、競技の公平性や選手の技術向上、試合の魅力向上に貢献している」という。いまや、スポーツの世界において最終的なジャッジの正確性を担うのは、最先端のテクノロジーというのが常識となっている。
ここで、一つの疑問が生じる。日本のプロ野球のリプレー検証には、なぜ、ホークアイを活用しないのか。