3回目の日米交渉は自動車関税を議論

——日鉄によるUSスチール買収の交渉は、関税交渉においても参考になりますか。

細川:関税交渉においても同じパターンです。自動車関税を巡っても、米国における生産・雇用にどれだけ貢献できるかというアピールをできるかが鍵になります。

——3回目の日米関税交渉の進展は。

トランプ米大統領は一転して「買収」承認を示唆した。写真はUSスチールのエドガー・トムソン工場(写真:AP/アフロ)

細川:極めて大事な局面でした。ベッセント財務長官が不参加のなか、ラトニック商務長官とグリアUSTR(通商代表部)代表とわざわざ個別に交渉に行っています。

 ラトニック商務長官らと個別に議論する意味は、やはり自動車関税を巡る交渉でしょう。米国政権内において自動車関税は「通商拡大法232条」に基づき商務省の所管になります。事務レベルでは4日前から協議をしており、自動車関税を巡る話をちゃんと進めていることが推察されます。

——造船分野が対米交渉で「有力カード」になるという話も出ています。

米国への産業支援、国内の製造業復権がカギ

細川:トランプ大統領は造船局も新設するほど、造船業の復活に力を入れています。韓国の尹(ユン)前大統領にも造船協力を求めて電話をしたほどです。米海軍長官も造船業での協力を日本に求めており、この交渉カードを日本が磨くことは大事だと思います。

 ただ問題は、日本の民間の造船業に米国に協力するだけの余力・体力があるかどうかです。日本に寄港する軍艦の補修だけでは目新しさがなく、米国における造船所の立て直し、そして米国の造船業の復権に繋がらないと意味がありません。

 一方、今の日本の造船業も衰退の一途をたどっており、政府による造船業に対する産業政策も極めて貧弱。米国に協力すると旗を振っても、日本の造船業が反応できるかが最大の問題です。

 日本政府が日本国内の造船業を復活・再生させるほどの大きな支援策をしなければ、米国への造船業支援は絵に描いた餅になるでしょう。製造業の衰退は、日本にとっても「明日は我が身」です。

——農業についての交渉カードでは、とうもろこしや大豆の輸入拡大の話もあります。