相次ぐ悲惨な事故、制度の厳格化待ったなし

 外免切替に対して厳しい目が向けられるようになったのは、2024年夏ごろからです。必要な運転技能や交通法規の知識を欠いているにもかかわらず、外免切替で日本の免許証を手にした人が各地で事故や事件を引き起こすケースが目立ってきたためです。そうした事案の一部を以下で示しました。いずれもハンドルを握っていたのは外免切替で日本の免許証を取得した外国人だったとされています。

▼2024年8月、山梨県河口湖町=外免切替で免許を取得してレンタカーを運転していた中国人の女が赤信号を無視して交差点に入り、中国人夫妻をはねる。夫妻は死亡。

▼2024年9月、埼玉県川口市=中国籍の18歳の男性が、時速125キロで一方通行の道路を逆走し、会社役員の男性(当時51歳)の車と衝突。男性を死亡させた。酒気帯び運転だった。

▼2025年5月、埼玉県三郷市=中国籍の男が飲酒のうえ車を運転し、下校中の小学生の列に突っ込む。小学生4人が重軽傷。運転していた男は現場から逃走し、のちに道路交通法違反容疑(ひき逃げ)で逮捕。さらに飲酒も発覚したことから、警察は容疑を過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱に切り替えて送検。

▼2025年5月、三重県の新名神高速道路=ペルー国籍の男が高速道路を14キロも逆走し、車4台と衝突。女性1人にけがを負わせた。

 これらの事故はテレビや新聞で大きく報じられただけではありません。事故前後の様子は市民のドライブレコーダーなどで記録され、その後、YouTubeなどに投稿・引用されて拡散。国民の間で「外免切替の制度はこのままでいいのか」という大きな疑念を生む結果となりました。

 一連の問題は、国会質疑や閣僚の記者会見などでも次々とテーマになります。「外国人の働き手を増やすために」という観点は後景に退き、制度の緩さを戒めるものばかりになってきました。

「(二者択一の)知識確認の問題が簡単すぎて、日本の交通ルールをよく理解していないのではないか」「ホテルなどの一時滞在場所を『居住地』として認めることは事故を起こしたときなど、適正に対応できるのか」という声は日に日に強まっています。

 こうした世論に押される形で政府は制度の見直しに着手する考えを示しました。今のところ、「知識確認」の問題を見直すことや、住所確認では住民票の提示を必須とするなど厳格化を図る方針です。制度改革は法律の改正を必要とせず、省令の改正で可能とされています。悲惨な事故を減らすための改革に「待った」はありません。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。