木寺: 私もAIに深く関わっていますが、翻訳だけでは、海外の人が書いた本を翻訳して読んでいるようなもので、文化的背景が全く感じられないことがあります。
事例もすべて海外のものばかりだと、海外でビジネスをする上では良いかもしれませんが、日本では少し違うと感じます。
日本的な文化がAIから抜け落ちてしまうと、今後ますます欧米化が進み、日本の生活様式が大きく変わってしまうのではないかと危惧しています。
例えば、こたつや座布団といった日本の伝統的な生活用品がAIによって認識されず、テキスト机や椅子テーブルばかりが推奨されるようになるかもしれません。
今後、AIが先生となり、子供たちがAIを中心に勉強する時代が来るとすれば、こたつもない、座布団もない、畳もないといった環境で育つことになりかねません。
「これは何ですか?」とAIに聞いても、「おばあちゃんの家にあるものです」といった曖昧な答えしか返ってこないかもしれません。
海外の友人には日本好きな人が多く、日本の文化を学びたいと思っているにもかかわらず、AIに聞いても分からないという状況は避けたいです。
「日本に行くのですが、どんなものを食べたらいいですか?」とAIに聞いても、「寿司と天ぷら」のようなステレオタイプな答えしか返ってこないのは寂しいです。
文化的な背景がAIから失われることのないように、個人情報はある意味文化と結びついているものなので、AIの学習において、一定の配慮をいただけることが非常に重要だと考えています。
適正なデータ利活用の推進と国際競争力
小川審議官: 日本企業の中にはデータ利活用において「ホワイト」であると明確に示されない限り、なかなか安心してデータ利活用に踏み出せない場合があるというご指摘もいただくことがあります。
今回ご提案している統計作成等と整理できる場合や契約履行に係る場合等についても、関係者のニーズやご意見をお伺いしながら適用される事例等の検討を深めること等により、我が国における適正なデータ利活用の推進を下支えしていくことができれば大変嬉しく思います。
また、AI時代・デジタル化に対応したプライバシー保護やデータガバナンスが実現するように、事業者内の体制整備や人材育成、自主的取組へのインセンティブ等についても今後も官民連携して検討を深めていきたいと考えています。
リスクに応じて社会全体のデータガバナンスを確保し、個人・消費者と事業者との信頼が確保された形で適正なデータ利活用が実現することが、信頼性の高いデジタル空間を構築し日本の国際競争力を高めることにもつながるように思います。
個人情報保護法を遵守して適正に個人データを活用したビジネスがきちんとできるということを明確に示すことで、個人・消費者からの信頼を得ながら企業が安心して日本で事業展開をできるような環境を官民の幅広い関係者と対話しながら実現していきたいと考えています。
おわりに
小川審議官のお話から、日本の個人情報保護法がAI時代の新たな課題に対応すべく、柔軟な改正が議論されていることが明らかになりました。
特に、日本発のAI開発を推進するためには、文化的な背景の重要性が示唆され、非常に示唆に富む内容でした。