本物の芸術とは何か
この展覧会は1958年から67年続く「日府展」という公募展の企画として実施しているものです。
日府展の元祖、洋画から日本画に転じた画家・川端龍子には全長28メートルに及ぶ巨大な絵巻壁画作品「逆説・生々流転」があり、そのオマージュとしてこういうことを考えました。
1958年の「狩野川台風」は戦後復興期にあった日本に大きな被害を与えました。
それに触発されて書き上げられた川端龍子の大作は、台風の発生から日本列島への上陸と、与えた被害、さらに復興までが科学的な観点から巨大絵巻として描かれています。
私たちの「歌留多尽くし」によるAI壁面はそのような先達、川端龍子の再評価を念頭に考え、実装してみたものです。
一言でいうと、いま大阪万博で何かやっているものは、私たち落ち着いた背景をもって制作に生きている芸術人からすれば、あまりに次元が異なります。
科学的な観点からはもっと点が辛くなるだけでなく、「研究倫理違反」「個人情報コンプライアンス干犯」などが懸念されます。
私自身、創設に尽力した「東京大学大学院学際情報学府」という教育機関が、私が干されている間に、手ひどいディプロマ・ミルに堕落し、救いようのないインチキを再生産する具に堕ちていた可能性を、公開の場で具体的な証拠に基づいて検討するのが、今回のシンポジウムの一つの役割です。
ご来場の皆さんと共に是は是、非は非として、一切値引きなく共有したいと思います。
私個人は、芸術音楽に仕事としてかかわって40年近くになりますが「メディア・アーティスト」を自称する優秀な人に会ったことがありません。
ナムジュン・パイクでも、荒川修作さんでも、筋の通った芸術人はそんな自称はしていません。
メディア・アーティストとは、電機企業の広告塔が商業臭を消すために濫用したことは、知る人なら誰でも知っている単なる事実に過ぎません。
多額の公金を投入した大阪万博は、現時点で想定した入場者数を大きく下回っている現状から、終わってみれば莫大な赤字に陥ることは間違いないでしょう。
その赤字はいったい誰が背負うのか。
万博を設計した建築家、ならびに関連企業、無駄遣いをしたアーティスト各位が弁償すべきで、国民、大阪府民、大阪市民などに一銭たりとも押し付けるべき筋合いの無駄遣いとは思われません。
アーティストなどというと、何か特権的な人間かと思う人が多いかもしれませんが、それは勘違いか間違いであることを、今回のシンポジウムでは根拠とともに実証し、受益者として適切な責任を負うことを丁寧に示す念頭です。