不正請求はおよそ28億円

 これらは、訪問看護を医療保険で利用する際の疾患を挙げた「別表7」に記載されているパーキンソン病に関する条件だが、1日3回訪問看護を利用する条件ではない。本来は、転倒リスクなどを考慮した上で適切に判断すべきだ。

 例えば、転倒のリスクは健常者にも存在するものだ。パーキンソン病の人に対して複数名の訪問が必要であったのかどうかの議論をより公正なものにするのは重要だ。

 国の機関である難病情報センターの解説によれば、パーキンソン病の重症度分類として、ヤールは0~5度に分類される。このうち3度は確かに軽~中等度パーキンソニズム(運動障害)の症状が見られるものの、「姿勢反射障害(姿勢保持障害)あり。日常生活に介助不要」というのが条件に含まれている。姿勢を保つ能力が低下しているものの、日常生活も介助なく送れる人たちということだ。

 また生活機能障害度も、1~3度に分かれるが、2度の時点であれば、「日常生活、通院に部分的介助を要する」だ。

 サンウェルズはこうした点について自社の説明では触れていないが、医学的な知識がない場合にも不正の可能性を理解できるように制度も整備すべきだろう。

 指示書が金科玉条のように扱われ、現実的にはそれで杜撰な運用が許されるとしたら、制度を抜本的に変えるしか選択肢はない。手厚い訪問看護が本当に必要であれば良いが、実際、入居者や社内の看護師らからも疑問が上がるほどの問題ある対応だった。

 調査報告書では、数十秒の訪問看護が30分として請求されていたというように、明確な異常請求があれば過大請求として扱われたようだ。合算すると不正請求は28億円程度だったという。

 不正な公金詐取が行われていたので、保険料の返戻は額面通りにはならないだろうが、このほかの訪問看護を含めた同社の事業の妥当性が問われても不思議ではない。サンウェルズの上場再審査はどのような結末を迎えるのだろうか。