睡眠センサー確認が「30分、複数人」請求に

 調査報告書では、ほかにも杜撰な運用が明らかにされている。

・数分の訪問看護を30分と偽装して請求。
・複数人訪問であるはずが同行者不在なのに複数請求。
・夜間は睡眠センサーの画面を確認するだけでも30分複数人として請求。
・数十秒の確認作業で30分の訪問看護として請求。
・訪問介護でも訪問看護と同じような問題が確認された。

 夜間に睡眠センサーを確認して、30分の訪問看護が完了とは目を疑う内容だ。

 報告書では、あまりにも典型的な問題事案であることから、「短時間訪問事案」と「同行者不在訪問事案」という名前まで付けられていた。短時間訪問は17万1546件に及んでいた。

 訪問看護ステーションは介護住宅の敷地内にある。数十秒の確認で公金ザクザクとは、笑いが止まらなかっただろう。

 また、訪問介護での不正は判明したが、実態調査は未実施だ。

 さらに言えば、今回の調査報告書には「福祉」という言葉が一度も出てこない。PDハウスで、難病と関連が深い障害者福祉サービスの利用面で問題があったかどうかは把握できない。仮に問題がなかったとしても、福祉の問題についての言及はあってよいと考える。

 訪問看護について言えば、やっている看護師も良心の呵責にさいなまれていたかもしれない。調査報告書には次のような訴えについても記述されていた。経営陣の対応が乏しかった様子も指摘されている。

・入居者の問題提起が行われたが、経営陣は特に全社的な対応をせず。
・従業員からの問題提起が行われたが、経営陣は特に全社的な対応をせず。
・内部通報があったが経営陣は特に全社的な対応をせず。

 不正請求の問題は、経営陣にも共有されていたわけだ。なぜ対応が取られなかったかのはわからないが、結果として経営陣は動かず、報道によって不正が伝えられることになった。

 報道機関はオールドメディアなどと揶揄されるが、こういう状況を見ると、報道機関がなければ、公金チュウチュウ企業が跋扈しかねない状況が続くのではないか。