捜査当局が詐欺集団に「口座を売る」

星:今回の乗っ取り事案の犯罪フローを思い出していただきたいのですが、特殊詐欺集団は株式を「利確」した時点で、それを現金化しなければいけません。不正アクセスの出所を明らかにすることは難しくとも、売り用の証券口座から銀行口座に入金されるプロセスを追うことは比較的容易だと思います。

 例えば、法執行機関が銀行と協力して架空名義の口座を作り、特殊詐欺集団に買わせる。「乗っ取り」で得た売却益が当該口座に振り込まれることで犯罪収益の流れをつかみ、逮捕する、といった捜査手法が考えられます。一種の「おとり捜査」のようなものですね。

 もちろん、彼らは仮想通貨の口座を経由して現金化するなど、容易にお金の流れを追跡できないようにしているとは思いますが、それでも法執行機関が直に確認できる口座をつかませることは、捜査の役に立つでしょう。

 こうした捜査を可能にするには「犯罪収益移転防止法」(犯罪による収益の移転防止に関する法律)を改正していく必要があります。