トレーラーとは、「トラクター(トレーラーヘッドともいう)」と呼ばれる運転席のある牽引車部分と、「トレーラー」という被牽引車(荷台)の部分を連結し、一体化させた車両の名称です。車軸の数にもよりますが、最大積載量は20トン前後で、コンテナを積んでいるときにはトレーラー部分の重量がとても重くなるため、運転には極めて高い技術と慎重さが求められます。
トレーラーの走行で、もっとも危険なのが「ジャックナイフ現象」です。ジャックナイフとはご存じのとおり、折り畳みのできる小型ナイフのことです。
トレーラーとトラクターは鋼鉄製の1本のピンだけで繋がっているため、トラクターは、時計の針のようにピンを中心に左右に90度以上曲がるよう設計されています。つまり、高速で走行中、カーブで急ブレーキや急ハンドルを切ると、そのまま直進しようとする後ろのトレーラー(荷台)部分がトラクター部分をくの字に曲げながら押し出してしまう、まさにジャックナイフのような現象が起きやすく、一瞬で操縦不能に陥ってしまうのです。
今回の大事故は、まさにこの「ジャックナイフ現象」によるものでした。

駆動輪は4本とも摩耗タイヤ、偽装工作で車検すり抜け
実は、事故を起こした大型トレーラーのトラクター部分は、駆動のかかるタイヤ4本が、4本とも全く山がないほどすり減っていたといいます。
父親の伸一さんは怒りを込めてこう語ります。
「この運送会社は、車検時には山のある別のタイヤに履き替え、合格した後は再び元のタイヤに履き替えるという悪質な偽装工作をおこなっていたことがわかっています。
それだけではありません、制限速度60キロの道で緩やかな上り勾配のカーブにもかかわらず、アクセルを踏み、20キロオーバーの時速80キロで走行し、車線を逸脱していたのです。
事故当日はかなり強い雨が降っていました。そんな中、つるつるに摩耗したタイヤで大型トレーラーを速度超過で運転すれば、駆動輪がスリップし、大事故につながる危険性があることは誰にでも分かるはずです。本件は、単なる事故ではありません、起こるべくして起こり、その結果、娘の命は奪われたのだと私たちは思っています」
トレーラー業界の関係者に話を聞いたところ、確かに大型車のタイヤは高価で、本数も多く、維持費を圧迫するようです。実際に、コンテナを積載していないときは必要のないタイヤをリフトアップする「リフトアクスル」という機能を使って、タイヤの摩耗や高速料金を抑えるために工夫しているといいます。
しかし、車検時のみ山のあるタイヤに付け替えるといった行為は論外で、安全運行に対する意識があまりに低すぎるとのこと。本件では、すでに管理者が業務上過失致死傷などの容疑で書類送検されていますが、会社の責任こそ厳しく追及されるべきだという怒りの声が多く聞かれました。