さきほどの作品にもどりましょう。こんどこそ、よくよくチェックするようにします。
 
 タイマーを2分に設定します。そして絵についてできるだけ多くのディテールを書きとめてみましょう。

 箇条書きでよく、文章にする必要はありません。

エドヴァルド・ムンク《叫び》 1893 テンペラ・クレヨン, 厚紙 91×73.5 cm オスロ国立美術館所蔵 

 終わったら、次のことを書きとめたかどうかを確認してください。

叫んでいる人に髪がないことは、書きとめましたか?
絵にえがかれていた人の数は、書きとめましたか?
背景の船は確認できましたか?いくつえがかれていましたか?もし気づかなかったなら、すぐにもどって、数えてみましょう。
橋には手すりが何本ありましたか?
絵の右側の縁は、確認しましたか?

【答え】絵には3人の人物、2せきの船、3本の手すりがえがかれている。
 
 題名はノルウェー出身のエドヴァルド・ムンクがえがいた《叫び》ですが、この絵を長くじっくりと見てみて、先ほどと比べて、どれだけ多くのことに気づきましたか?

我慢強く注意をはらうことが、価値ある発見につながる

 ここまで見てきたように、ものごとをより長く、より注意深く見れば見るほど、より多くの発見があります。

 レオナルド・ダ・ヴィンチやスティーブ・ジョブズのような世界の偉大な人の多くは、発明とはただ新しいものを作りだすというよりも、ものごとの可能性を発見することだと信じていました。

 目を見ひらいて、脳を働かせ、集中して、注意を向けるだけで、わくわくするような可能性を発見することもできます。アイザック・ニュートンもこれに同意し、「私が価値ある発見をしたとすれば、それは他のどのような能力よりも、がまん強く注意をはらったおかげである」と語っています。

 私たちのだれもが、さまざまな方法で観察することで、偉大な結果につながる発見をする力を持っています。その発見につながる気づきのためにこそ、訓練しておく必要があります。