
NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役を務める、江戸時代中期に吉原で生まれ育った蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。その波瀾万丈な生涯が描かれて話題になっている。第18回「歌麿よ、見徳(みるがとく)は一炊夢」では、蔦重が絵師の北川豊章に会いに長屋を訪ねると「捨吉」と名乗る男と出会う。蔦重は捨吉こそが、姿を消していた唐丸だと確信するが……。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を解説した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
注意喚起テロップとともに話題になった出演者の岩井志麻子
今回の放送では、冒頭に「番組の一部に性の表現があります」と異例の注意喚起がなされた。
吉原を舞台にした大河ドラマ『べらぼう』では、遊女の過酷さを強調すべく、これまでも性の表現がなされてきた。「なぜ今さら……」と疑問に思いながらも、番組内容を見て納得したという視聴者の声が放送後のSNSでは散見された。
キーパーソンとなったのは、横浜流星演じる蔦屋重三郎の前から姿を消していた、唐丸(からまる)だ。絵が得意だった唐丸の筆致を思わせる絵を見つけた蔦重は、作者とされる絵師の北川豊章(きたがわ とよあき)のもとを訪ねる。
実際に会ってみると、加藤虎ノ介演じる北川豊章は唐丸とはまるで別人だったが、日を改めて豊章の長屋を訪ねると、そこには染谷将太演じる「捨吉」と名乗る男がいた。どうも豊章は捨吉に絵を描かせて、自身の作品として発表しているらしい。
この捨吉こそが成長した唐丸だ、と一目でわかった蔦重。男女問わず体を売って暮らす捨吉をなんとか救おうとするが、捨吉の心は閉ざされたまま。蔦重の言葉は一向に届かない。
注意喚起のテロップのほかに、放送前にもう一つ話題になったのが、作家の岩井志麻子が出演者にクレジットされていたことだ。
岩井は『ぼっけえ、きょうてえ』で第13回山本周五郎賞を受賞し、ホラーや怪談を中心に多くの作品を発表。テレビで奔放な私生活を語ることも多いだけに、どんな役柄なのかが注目されたが、捨吉の身体を買いに来た尼の寂連(じゃくれん)役を演じた。
セリフこそなかったが、その妖艶な笑みが放つオーラは、捨吉が置かれた状況がいかに異様なのかを表現するのに十分過ぎるものだった。