鳥山石燕画『百鬼夜行 3巻拾遺3巻』(部分)文化2年(1805)出典:国立国会図書館デジタルコレクション

(鷹橋忍:ライター)

今回は、大河ドラマ『べらぼう』において、片岡鶴太郎が演じる鳥山石燕を取り上げたい。染谷将太が演じる喜多川歌麿の師としても知られる鳥山石燕は、どのような人物だったのだろうか。

浮世絵は描いていない?

 鳥山石燕は、正徳2年(1712)に生まれたとされる(正徳元年説あり)。

 寛延3年(1750)生まれの蔦屋重三郎よりも38歳年上、宝暦3年(1753)の生まれだと推定される弟子の喜多川歌麿よりも、41歳年上となる。

 本姓は佐野で、名を豊房といい、江戸の根岸に住んでいたとされる。

 石燕は、幕府の御用絵師である狩野派の町絵師と伝わり、人物画に秀で、妖怪画を得意とした。

 浮世絵と見なされる絵は確認できていないが、宝暦時代(1751~1764)に、女形・中村喜代三郎の似顔絵の額を浅草観音堂に奉納し、役者似顔絵の創始となったなど、浮世絵師的な色合いも強く持ち合わせていたという(松木寛『新版 蔦屋重三郎 江戸芸術の演出者』)。

 また俳諧師・東流斎燕志に師事し、俳諧を嗜んだ。絵画だけでなく、文学にも通じていた。

 橋本淳が演じる北尾重政とは、俳諧仲間として大変に親しかった。

 石燕にとって芸術は、もともと本業ではなく趣味だったという(マイケル・ディラン・フォスター著 廣田龍平翻訳『日本妖怪考──百鬼夜行から水木しげるまで』)。