蘭子が本音を明かし始めた。セリフが唐突でなく、練られているから、観る側は胸をつかれる。これを聞いた豪も胸の内を明かした。
「ワシからもお願いがあります。無事戻ってきたら、ワシの嫁になってください」
突然の告白を受けた蘭子の戸惑うしぐさに…
ここからが、やはり若き名優と評判高い河合の真骨頂だった。待っていた言葉のはずだったが、困った表情を浮かべ、小声で「えっ」と漏らす。おそらくはアドリブだろう。その後は何度も何度も顔と髪を撫でた。緊張で体が熱くなったのだ。これもアドリブに違いない。

「豪ちゃん、どうしてそんなこと言うが」(蘭子)
「すいません」(豪)
どこまでもシャイな2人だったものの、ついてきたのぶが急かしたため、蘭子はやっと思いを打ち明ける。
「ウチ、おまえさんのこと、うんと好きちゃ。豪ちゃんのお嫁さんになるがやき、戻ってきてや」(蘭子)
「ありがとう」(豪)
その後、走ってきた羽多子が蘭子に着替えを渡し、2人で1泊してくるように伝える。着替えを手にした蘭子と豪は夜汽車に乗った。豪は生きて戻れるのだろうか。