都道府県・市町村が運営する国保には扶養の概念がない
──「職業別国保」に入るという方法も紹介されていました。
笹井:国保には二種類あります。「都道府県・市町村が運営する国保」と「業種ごとに組織される国保」です。前者よりも後者のほうが安いのです。なぜ安いのかは明確には分かりませんが、加入者の平均年齢が若いということがあるのかもしれません。
法人でないところで働いている人は国保加入になりますが、そういう方は業種組合を探してそこに加入すると、収入によらない定額保険料なのでだいぶ安くなると思います。
──笹井さんは物書き系の組合の国保に加入されたのですよね?
笹井:そうです。文芸美術国民健康保険に加入しています。私の収入で、都道府県・市町村が運営する国保だと、年間の国保料がおよそ88万円です。しかし、文芸美術国保だとおよそ56万円です。ずいぶん安くはなりますよね(まだ高いですけれど)。
──やはり、国保について取材されてから切り替えたのですか?

笹井:そうですよぉ。88万円も払いたくないので必死です。とはいえ、業種ごとに組織される国保には、それぞれ加入の条件があります。文芸美術国保の場合は、著書を出していることや、理事の推薦が必要です。業種組合もそう簡単に加入させたくないという本音があるのです。
それと、結局そちらにも入会費や年会費がかかる場合もありますが、それでも私は都道府県・市町村が運営する国保よりはいいと思います。
──都道府県・市町村が運営する国保には扶養の概念がない上、世帯人数に応じて「均等割」などの保険料の上乗せがあるため、家族が多いほど、子どもが多いほど損な国に日本がなっているというお話がありました。これはもっと政治テーマになるべきですよね。
笹井:多少は政治テーマにもなっていて、2022年から未就学児は均等割で半額にする自治体が増えています。全国商工会連合会の調べでは、70自治体が18歳以下の均等割を厳免しています。他にも、産前産後期間4カ月の国保料の免除が出る自治体もあります。
しかし、そもそも均等割というものが、社保に入っている勤め人の方々には発生しません。誰にでもかかるという考え方が都道府県・市町村が運営する国保の特殊性なのです。おかしいですよね。もうちょっと他の保険と同じようにしてほしい。
本当は国政が改善してくれたらいいのですが、対応がなかなか進まないので、各自治体が各々の方法で改善を試みているという現状です。均等割があるから、家族がいる人ほど保険料が高くなっている。
そこには「子どもがいるならその分医療を使うでしょ」「使っている人がいるなら払え」という考えがありますが、私はその考え方が間違っていると思います。
笹井恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。本名・梨本恵里子。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスとして活動。日本文藝家協会会員。自身はかつて地方公務員だったため共済組合だったが、およそ10年前から国保に加入。3年前、高い国保料の通知を見て驚き、以来精力的に国保関連の取材を続けてきた。著書に『潜入・ゴミ屋敷』『実録・家で死ぬ』(ともに中公新書ラクレ)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『老けない最強食』(文春新書)など。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。


