国保加入者の個別ケースに実感のない厚労官僚
笹井:「中福祉・中負担」じゃないでしょう。前述の説明からも分かるように「低福祉・高負担」です。その方は国保の制度設計をされた方ですが、「一番国保が使われているから国保が高いんだよ」とおっしゃる。
「社会保険の人たちは使っていない(病院にかかっていない)から保険料が安い」と言われましたが、それは加入者の年齢が若いからです。
結局、会社を定年退職した高齢者が国保に入り、少ない自営業者たちが支えるという構造になっている。それなのに、上から目線で「使っているから高いのですよ」と言われているようで、「もう取材は結構です!」と言って電話を切ってしまいました。
その時に、ある区の計算方式で「所得400万円で保険料が年間70万円くらいです」と言ったら、「そんなに高いわけないだろ」とも言っていました。
──制度設計されている方でも、個別のケースがどうなっているのか、実感がないということですね。
笹井:そうです。
──恐ろしいですね。
笹井:恐ろしいですよね。その方は本当に「所得400万円で保険料が年間70万円くらいです」と私が言った時に、一瞬止まっていましたよ。日本ではおよそ2500万人が国保に入っていますが、いかに高いかは入っていない方には分からない。
私はこれまでこのテーマで、オンラインメディアに記事を書いてきましたが、怒りを持って賛同してくださる国保加入者のコメントをたくさんいただきました。
──保険料の支払いという観点から、ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓氏は本書の中で「ちょこっと起業」を勧めています。
笹井:100%起業・独立となると、どうしても都道府県・市町村が運営する国保になってしまいます。そこで、どこかの会社にパートタイムや再雇用のような形で勤め、そこの社保に加入させてもらいながら残りの時間で自分の本業をやるということです。特に定年が見えてきた方や、定年以降の方などにはおすすめの働き方です。
やはり起業や独立をしても、必ずしもすぐにうまくいくわけではありません。セーフティーネットのような感覚で、定年後に同じ会社で一定働くのはおすすめです。