(英エコノミスト誌 2025年4月26日号)

総選挙前夜に見るカナダの政治的な変化は衝撃的だ。
4月28日、カナダで総選挙が行われる。
野党・保守党党首のピエール・ポワリエーブル氏は精力的で印象に残る人物だが、本誌エコノミストは元中央銀行総裁で与党・自由党党首のマーク・カーニー氏の方が優れた首相になると考えていると聞いても読者は恐らく驚かないだろう。
驚くべきは、ここ3カ月間にカナダ政界で生じた、並外れて大きな変化だ。
この変化は、貿易戦争が政治に及ぼす影響を浮き彫りにするとともに、中道左派の政党が有害無益な文化戦争から逃れる青写真も示している。
あらゆる民主主義国の政治にとって参考になる。
関税戦争で形勢が一変
ドナルド・トランプ氏の大統領就任後に国政選挙があった国は、今回のカナダを入れてもまだ2カ国にすぎない。
カナダの世間のムードや政治情勢は、関税の発動やカナダを「大切な51番目の州」にするという脅しを含めたトランプ米大統領の攻撃的な政策を受けて、そして長期政権を維持したジャスティン・トルドー前首相が1月6日に辞任したことによって一変した。
昨年12月には保守党が自由党に支持率で25ポイントもの大差をつけてリードしていた。
今では順位が入れ替わり、自由党が保守党を5ポイントほどリードしている。
この変化はカナダ史上最大かつ最速で、世界のどの国の記録に照らしても最大級だ。
保守党の支持者の分布には偏りがあり、得票数を議席数に効率的に結びつけられない形になっている。
同党の地盤はアルバータ州で、米民主党にとってのカリフォルニア州に相当する。
その結果、本誌の予測モデルでは、世論調査で揺るぎないリードを得ている自由党が議会で第1党になる可能性は86%だとされている(図参照)。
