米国にフック副首相を派遣して米財務長官と会談させたが、その会談は今後の交渉日程を話し合ったに過ぎないようだ。米国が簡単にベトナムの要求を飲むとは思えない。そんな難しいタイミングで習主席がやって来た。

現在ベトナムは中国から米国への迂回輸出の拠点になっている。中国企業が部品をベトナムに送り、組み立てて「Made in Vietnam」として輸出している。ひどいケースではラベルを貼り替えるだけとも囁かれている。これでは米国から目を付けられても文句は言えまい。
ベトナム経済は輸出が支えている。中国企業による露骨な迂回輸出を除いても、ベトナム企業が中国から部品を輸入してそれを組み立てて米国に輸出しているケースは多い。ベトナムは中国に対して大幅な貿易赤字を抱える一方、米国には大幅な貿易黒字を計上している。
ベトナムは長い間貿易赤字に苦しんできた。2010年代に入るとそんなベトナムにサムスンをはじめとする韓国の輸出産業が安い人件費を求めて進出してきた。それによって貿易収支が改善し、金融政策にゆとりが生まれた。
2020年頃になると、やはり国内の賃金が上昇した中国企業がベトナムに進出してくるようになる。その動きは2023年秋以降に加速した。それは、トランプ氏が大統領に再選される可能性が出始めてきたからだ(日本では「もしトラ(もしもトランプが大統領に再選されたら)」などと言われた)。トランプ氏は選挙戦で中国に高関税を課すと公言していた。