価値のもとになる「ブランド」とは何か?
レクサスやグランドセイコーなどのように、今までとは違ったアプローチでブランド価値を高め利益につなげることに成功するブランドがこれからも増える余地は大いにあるでしょう。そのためには自社のブランドではそこまで価値がないと思い込むのではなく、高い粗利益率を取るためにブランドをどうやって作るかを考えることが大切です。
これによりグローバルで勝ち抜くための原資としての粗利益を稼げるようになります。
かといって、今のマークダウンをやめればいいかというと、そうではありません。やめても売れるだけのブランド価値を作り上げながら徐々にマークアップを高め、マークダウンを抑えていくという順序が必要です。何も価値が変わらないのに粗利益が上げられるほど消費者は甘くありません。
なお、ブランド価値というとブランドの時価総額が使われることもあります。それはあくまでもその「ブランド」ではなく「企業」の価値を示す指標のひとつだと思います。ブランド価値は短期で大きく膨らんだり棄損したりするものではないからです。
では、価値のもとになる「ブランド」とは一体何なのか。実は、戦略上見かけは同じに見えても、それぞれのブランド価値を支える本質の部分があります。
それが創業者の魂とも言える「世界観」です。創業者の強烈な世界観によって、年月を超えて揺るぎないブランドが作られていくのです。これこそがブランドの本質であり、出発点です。
私が初めてブランドに関わったのは、アメリカのアウトドアブランドであるエディー・バウアーの日本上陸時でした。
当時、私自身は正直言って、アウトドアやアウトドアウエアにはそれほどの関心があったわけではありませんでした。しかし会社を知るほどに、創業者であるエディー・バウアー氏の持つ世界観に強く惹かれるようになっていきました。
自身のサインがブランドのロゴにもなっていた創業者は、ハンティングやフィッシングはプロ級のアウトドアマンで自身のスポーツ用品店を開いた、とここまではありそうな話です。
しかし、その先が普通ではありませんでした。