「今年、都市対抗に出られなかったら休部にします」
社会人でキャプテンになった時、会社から「今年、都市対抗に出られなかったら休部にします」と伝えられた。「キャプテンになって、いきなりですよ」と苦笑する。
「あそこで『これは本当にやばい』と。それで『自分が変わらなきゃいけないんだ』という覚悟みたいなものができたんです」
選手たちの意見を聞きながら、うまく調整しながらチームをまとめていくバランス型のキャプテンから、「もう周りは気にしない。俺が引っ張る」という意識になった。
「その時に思ったのが、勝負はケンカなんだってこと。ケンカをする時に、大将が一番先頭に立って相手に向かって行かなかったら、下はひるむでしょう。大学の時の僕のように、後ろに下がっていて、『お前ら、行け』なんて言っても、『なんだよ、自分は来ないで』って信用してはもらえない。だからもう『俺は先頭切ってケンカしに行くんだ』と」
そしたらどうなったのか? 活躍したのは「下のヤツら」。若い選手たちが打って投げて結果を出して都市対抗の予選を勝ち抜いた。
「やっぱりケンカをする時は、下のヤツに気なんか遣ってないで、自分が前に出てどんどんやっている姿を見せなきゃいけない。そうすることで、下も力を発揮できるんだから」
だから監督になってからは、都市対抗予選の開幕前にベテラン選手だけを集めて、こんなふうに声を掛けた。
「若手に良い選手がたくさんいるけど、そいつらをアテにしていたら負けるぞ。お前らがチームを作れ」
昨年の社会人野球は、都市対抗が三菱重工Eastの佐伯功監督、日本選手権がトヨタ自動車の藤原航平監督と、二大大会で中島よりも若い世代、四十代の監督が優勝を果たした。
「お二人もそうですが、今は若い監督さんもみんなすごく勉強されていると思います。チームマネジメントがしっかりしていて、選手がそれに応えてきちんと野球ができている。結果を出せているのは、その辺りが根拠かなと感じています」
「やるべきことをしっかりやる方向づけというのを、選手たちにちゃんとわからせてやらせているんでしょう。ただ『やれ』と言ってやらせているわけじゃない。選手が自分たちで考えている、自発的に動いていという雰囲気にいかにして持っていくのかが大事で、そういうマネジメントの仕方が今の時代の野球の進め方なんでしょうね」
中島はそんなふうに分析する。そして、「実はそれって、木内監督が昔からやっていたことなんですよ」と意外なことを口にする。