若山彰の「喜びも悲しみも幾歳月」の声量のすさまじさは、何回聴いても驚異的である(ユーチューブで「昭和45年放送 日本歌謡チャンネル」の動画を御覧じよ)。

 歌ということでいえば、現在、唱歌や童謡が完全に消えつつある。

 絶滅危惧種という言葉は聞くことがあるが、唱歌・童謡はさしずめ絶滅危惧文化のひとつであろう。しかしそれらが、このまま消滅してしまうにはいかにも惜しい。

 唱歌・童謡には、「美しい日本語」があるという。また「思いやりの心を育てる」「心の離乳食」だともいう。

 しかし一番いいのは、詞とマッチしたメロディが美しいことだ。

 わたしの好きな唱歌は、「仰げば尊し」であり「赤とんぼ」であり「里の秋」である。「たきび」「早春賦」「どこかで春が」「故郷」「みかんの花咲く丘」「旅愁」「朧月夜」である。

「男らしさ」や「女らしさ」がいつの間にか禁句にされ、死語となったように、「子どもらしさ」も封殺されてしまった。

 これらの歌を聴くと、心が自分の幼年期に引き戻され、このうえなく懐かしい。いまでは、安田祥子・由紀さおり姉妹が歌っているのを聴くしかないのか。

いまでも「記憶に残る」テレビドラマ

 昭和で衝撃的だったのは、テレビの出現である。

 プロレスには熱狂した。だがいまでも記憶に残っているのはテレビドラマである。それもアメリカのドラマだ。

 わたしが好きだった1位は、デビッド・ジャンセン主演の「逃亡者」。2位は、「ベンケーシー」である。主演はヴィンセント・エドワーズ。3位はロバート・スタック主演の「アンタッチャブル」、4位は「ルート66」。5位は「サンセット77」である。

デビッド・ジャンセン主演のドラマ「逃亡者」(写真:Everett Collection/アフロ)

 不動のベスト5である。

 このときほど、毎週、テレビドラマを見るのが楽しみだった時期はほかにない。

 ほかにも「0011ナポレオン・ソロ」とか「ライフルマン」とか「コンバット!」「拳銃無宿」など、名作が目白押しだった。