年末調整後の申告し忘れも確定申告でカバー可能
「年末調整を終えた後に、所得控除が適用できたのにし忘れていた」という経験はないでしょうか。例えば、生命保険に複数加入している場合は、生命保険料控除の申請漏れが起こり得ます。この分の所得控除(生命保険料控除)を反映させて、税金を安くしたいならば、確定申告が必要となります。
申告し忘れの多い4つの控除は以下の通りです。
①配偶者が産休・育休を取得した…配偶者控除・配偶者特別控除
②扶養親族が増えた(父母・祖父母など)…扶養控除
③子供の国民年金保険料を支払った…社会保険料控除
④iDeCoに加入した(している)…小規模企業共済等掛金控除
どれくらい税金を安くできるのかの金額も合わせて紹介します。
所得税を計算するにあたり、前提条件は以下のとおりです。
・年齢45歳、東京都在住、健保加入
・年収1000万円(収入は全て給与収入、賞与なし)
・給与所得控除195万円、基礎控除48万円、社会保険料控除135万円
・課税所得は1000万円−195万円−48万円−135万円=622万円
・所得税は622万円×20%−42万7500円=81万6500円(復興特別所得税は考慮せず)
①配偶者が産休・育休を取得した…配偶者控除・配偶者特別控除
所得控除を受ける人が合計所得金額1000万円以下であり、かつ、配偶者の所得が48万円以下の場合に「配偶者控除」、48万円超133万円以下の場合に「配偶者特別控除」が受けられます。
普段、夫婦ともにバリバリ稼ぐ共働き世帯の場合であっても、夫または妻が産休・育休を取得した場合、相手方の収入が少なくなり配偶者控除や配偶者特別控除の対象になる場合があります。
仮に配偶者控除の対象になった場合、課税所得は584万円になります。所得税は74万500円となり、7万6000円の所得税が減らせます。節税できる金額は、所得税率×控除金額で簡易的に計算が可能で、この場合、20%×38万円=7万6000円と計算できます。確定申告することでこの金額が還付されます。
なお、2025年より所得税の基礎控除が10万円引き上げられて58万円、給与所得控除の最低保証額が65万円に引き上げられる予定。これにより、2025年分からは配偶者控除は「年間の合計所得金額が58万円以下」、配偶者特別控除も「年間の合計所得金額が58万円超133万円以下」の場合に受けられるようになります。
②扶養親族が増えた(父母・祖父母など)…扶養控除
16歳以上の扶養親族がいる場合には「扶養控除」の対象になります。高校生や大学生の子供を養っている場合は、この扶養控除の申告を忘れることはないのですが、同居していない父母や祖父母などに仕送りしている時は申告し忘れがちです。
「48万円」の控除が受けられる条件を満たしているにもかかわらず、申請していない人が意外と多くいます。扶養控除の適用要件に「生計を一にする」とありますが、一緒に住む必要はありません。
なお、生計を一にしていて普段同居している場合は10万円が上乗せされて「58万円」の控除が受けられます。日常的に同居していることが基本要件ですが、長期で入院している場合なども適用になります。
仮に扶養控除48万円の対象になった場合、課税所得は574万円になります。所得税は72万500円となり、9万6000円の所得税が減らせます。確定申告することでこの金額が還付されます。
③子供の国民年金保険料を支払った…社会保険料控除
20歳になったら国民年金に加入することになります。子供が学生であれば、学生納付特例制度により保険料の納付を猶予することもできます。
子どもの国民年金保険料は、親が代わりに支払うことも可能です。この時、その年に支払った国民年金保険料合計額が、その年の親の社会保険料控除として適用できます。
国民年金保険料は、2024年度は1カ月あたり1万6980円、2023年度は1カ月あたり1万6520円です。2024年1~3月は1万6520円、4〜12月は1万6980円ですので、2024年の1年間支払った場合は、合計20万2380円です。
ただし、子どもの国民年金保険料を支払っても自動的に社会保険料控除に適用となるわけではなく、申告しないと適用されません。
仮にこの金額が社会保険料控除として適用できると、課税所得は601万7000円(1000円未満切り捨て)になります。所得税は77万5900円となり、4万600円の所得税が減らせます。確定申告することでこの金額が還付されます。
④iDeCoに加入した(している)…小規模企業共済等掛金控除
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)に加入している場合、掛金全額が小規模企業共済等掛金控除に該当しますが、自動的にこの所得控除が適用されるわけではありません。「小規模企業共済等掛金払込証明書」を提出して申請する必要があります。
iDeCoに年間24万円積み立てている場合において、適切に申請することで課税所得は598万円になります。所得税は76万8500円となり、4万8000円の所得税が減らせます。確定申告することでこの金額が還付されます。
なお、iDeCoの掛金額の上限は今後増える見込みです。
・自営業者・フリーランス・学生…月6万8000円→月7万5000円
・会社員(企業年金なし)…月2万3000円→月6万2000円
・会社員(企業年金あり)…月2万円→月6万2000円
・公務員…月2万円→月5万4000円
iDeCoで掛金を多く出すことができるようになれば、節税できる金額もその分多くなります。