他の小売業者もアマゾンの技術で広告収入

 アマゾンは広告収入の内訳を開示していないが、米CNBCによれば、その大半はスポンサープロダクト広告だという。これはメーカーやブランドなどが特定の商品を宣伝するためのキーワードターゲティング(対象絞り込み)広告である。アマゾンは自社ECサイトでこれらスポンサープロダクトの掲載を増やしてきた。

 今回始めるAmazonリテール広告サービスでも、小売業者が自社ECサイトでこうしたスポンサープロダクトを掲載できるようになり、メーカー(広告主)から広告収入を得ることができる。サイト全体に表示される広告枠の数やデザイン、配置なども小売業者が自由に設定できるほか、アマゾンの広告分析・リポートツールも利用できる。

 アマゾンによれば当初、このサービスを利用する業者には、サプリメント販売の米アイハーブ(iHerb)やアジア系食料品ECの米ウィー(Weee!)、玩具・パーティー用品・手工芸品の米オリエンタル・トレーディング(Oriental Trading)などがある。

 アマゾン広告効果測定担当副社長のポーラ・デスピンス氏は、「小売業者、広告主、買い物客にとって有益となるように設計している」と述べた。

アマゾンの事業成長パターン、最終的に外販展開

 アマゾンはまず、自社事業のためにプラットフォームを開発する。それが成功すると規模を拡大する。やがて余剰能力が生まれる。それを活用すべく外販を始める。これがアマゾンにおける事業展開パターンだ。

 同社はECマーケットプレイス商品の倉庫保管と配送などを代行するサービス「Fulfillment by Amazon(フルフィルメント・バイ・アマゾン、FBA)」を出品者に提供している。最近はこのサービスを自社出品者以外の業者にも提供している。消費者が米イーベイや米ウォルマートのECサイトで購入した商品の一部はアマゾンの倉庫から配送される。今では、ウォルマートで購入した商品がアマゾンの段ボール箱に入れられ、アマゾンのドライバーが配達することも珍しくないといわれている。

 2022年には、他の小売業者ECサイト内で、このFBAとアマゾンの決済機能を利用できるようにするサービス「Buy with Prime(バイ・ウィズ・プライム)」を始めた。

 アマゾンにはECと異なるもう1つの事業がある。前述したAWSだ。今やその規模は競合となるIT大手を大きく上回っている。AWSのクラウドサービスは、もともと自社のEC向けシステムのために開発されたものだったが、2006年にこれを他の企業に貸し出す(外販する)事業を始めた。

 同社はコンビニエンスストアやスーパーマーケットなど、自社の直営店舗向けレジなし精算システム「Just Walk Out(ジャスト・ウォーク・アウト)」を開発したが、このシステムの外販も本格化させており、最近は他社店舗や競技場、オフィスビルなどに積極販売している。