中国当局の「情報隠し」の前科に懸念
HMPVの感染メカニズムはインフルエンザや新型コロナと同じで、飛沫感染が中心だが、握手などの接触や、ドアノブやキーボードなどの間接的接触でも感染することがあるという。3~6日の潜伏期間をへて症状が出るが、せきや発熱が長引けば重篤化することもあるという。
中国疾病コントロールセンター(CDC)の発表を見る限り、さほど恐れる必要のない状況だという見方もできる。それでも中国のSNS上では、40度以上の高熱が何度もぶり返し、体中の関節痛、筋肉痛、せき、下痢でのたうちまわる苦しさだといった悲鳴のような投稿も散見される。
複数の肺炎が大流行しているのは何も中国だけではなく、日本でもインフルエンザや新型コロナが大流行中で、インフルエンザ治療薬の一部はすでに製造が追いつかず一時供給停止に追い込まれているとか。
感染症は本来「ただの風邪」程度のものであっても大流行によって、医療機関がマヒしたり医薬品の供給不足が起きたりすると社会不安やパニックを引き起こす。経済や物流、人々の日常に深刻な悪影響をもたらしかねない。
ここで日本が考えるべきは、インフルエンザであれ新型コロナであれHMPVであれ、これ以上の感染拡大を防ぎ、社会が安心できる状況を維持するためにすべきことが何かだ。
今、中国周辺国家の医療関係者が大いに懸念していることは、中国当局が、国内の感染症状況について正しく情報公開をしていない可能性だ。米CDCは1月6日、「中国でHMPV症例が増加しているとの報道について、国際社会のパートナーと定期的に連絡を取り合い、監視コントロールしていきたい」と述べた。中国の発表を鵜呑みにするだけでなく、国際間で情報を共有することの重要性を訴えた。
インド、マレーシア、カンボジアなど中国の周辺国家も、HMPVほか中国の感染症に注意を払っている。インドなどではすでにHMPVの感染者を確認し、これが「中国のHMPV変異株と関連があるか調査中」としている。
ある医療関係者は「中国で流行しているのは普通のHMPVではなく、新種のウイルスかもしれない。SARSも新型コロナも中国当局は当初、大したことはない、感染はピークを過ぎたといった情報を流していた」と警戒感を示していた。